2002年5月の月曜日。フランス最高峰の理系専門校「エコール・デ・ミーヌ(国立高等鉱業学校)」元学部長のジルベール・フラードは、日産自動車が当時本社を構えていた東京・東銀座に教え子のカルロス・ゴーンを訪ねた。ゴーンはその前年に、日産の社長兼最高経営責任者(CEO)に就いていた。
午前8時、本社ビルの15階でエレベーターを降りたフラードは、社長室のすぐ脇の応接室に通された。コーヒーが運ばれて数分後。スーツ姿で現れたゴーンは誇らしげにこう言った。
「昔、学部長室で私に言ったことを覚えていますか」
さかのぼること25年以上前。…