米紙「ワシントン・ポスト」は4日、調査報道記事を掲載し、米国のコロナウイルス危機の最初の70日間における失敗の経緯とその深層にある原因を全方位から踏み込んで振り返った。この記事は、米国政府関係者や公衆衛生専門家、情報担当官僚、その他今回の感染症と闘っている人々に対する47回のインタビューをもとに書かれている。
米国は、2大大陸からの旅客の入国禁止、貿易のほぼ停止、医療設備を緊急に製造できる業界の募集などを含む一連の非常事態対応措置を講じた。同国の歴史上、かつてこれらの措置が同時に取られたことはない。さまざまな非常措置を講じ、しかも米国は流行病に対する準備が最も十分な国だとされていたにもかかわらず、最終的に新型コロナウイルスに惨敗し、死者数は他のどの国よりも多くなってしまった。しかし、本来であればこのような事態にならなくても済むはずだった。
1月3日、トランプ政権は新型コロナウイルスに関する最初の正式な通知を受け取った。数日のうちに、米国の情報機関が毎日大統領に提出している簡易日報でこの新型コロナウイルスによる脅威の深刻さについて警告した。これは西側諸国で初めて出された新型コロナウイルスに関する警告だった。
しかし、トランプ大統領は最初の通知を受けてから70日後になってようやく、この新型コロナウイルスが自国とは遠い脅威ではなく、抑制された無害のインフルエンザウイルスでもなく、致命的な恐ろしい力を持ち、米国の防御体系を崩壊させることができ、いつでも数万の国民の命を奪う致命的なパワーを持っていることを認識した。
そして今になってようやく、この無駄になった2ヶ月以上の時間が重要な期間だったことがはっきりした。トランプ大統領はこの何週間かの間に全く根拠のない断言を繰り返し、その結果、人々を極めて困惑させただけでなく、その発言内容は公衆衛生の専門家による緊急情報と矛盾していた。
1月21日、最近国外に渡航したシアトルの男性が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、米国内で初めて確認された感染者となった。そしてこの時から、米国政府関係者も自身の危機対応における失敗を直視するようになった。
米国疾病予防管理センター(CDC)は1月8日に初めて新型コロナウイルス関連の公開警報を発令し、さらに17日からロサンゼルスやサンフランシスコ、ニューヨークの主要空港に対するモニタリングを開始。これらの空港には毎日多くの乗客が到着している。しかし、その他の面では、状況はすでに制御不能となっており、シアトルでは感染者数が倍増。人々から提起される問題はますます多くなり、感染した旅客の国外からの到着を阻止する措置はなんら講じられなかった。
1月22日、トランプ大統領はスイスのダボスでCNBCの取材を受けた際、初めて新型コロナウイルスについて聞かれた。潜在的な流行病を心配しているか尋ねられると、トランプ大統領は「心配していない。すでに完全に封じ込めた。感染者は1人だけだ。全てはうまくいく」と述べた。
米国家安全保障会議(NSC)には実のところ、感染を封じ込めるチャンスがあった。米国の戦略を再調整し、可能な状況下でウイルスを封じ込め、さらに防護マスクや人工呼吸器など基本的な備品など、米国で感染が拡大した場合に病院で必要になる資源をどうにかして準備しておくことができたはずだった。しかし米国政府関係者はまもなく起こる事態への対応に備えるのではなく、どうやって米国人を感染が深刻な場所から退避させるかを含む後方支援の問題のほうに関心があるようだった。
何年も資金不足が続いた後、米国が備蓄するN95防護マスクや防護服、手袋、その他の物資はすでに深刻な不足に陥っていた。米国は人工呼吸器やマスク、その他の防護装備を揃えるための貴重なチャンスとなる期間を逃した。3月末、政府は人工呼吸器を1万台調達したが、それは公衆衛生関係者や州知事の要求に遠く及ばない数だった。
最も高くついた間違いは、これまで数十年間に起こった他の全ての感染症と同様に、米国内での新型コロナウイルス感染拡大規模は限定的であり、しかも米国疾病予防管理センターは独自に新型コロナウイルス診断テストを開発できると、保健衛生担当官僚が判断したことだ。
実のところ、米国が新型コロナウイルス感染拡大を阻止する上で犯した多くの失敗は、トランプ大統領の指導によるものか、もしくはトランプ大統領の指導によりさらに深刻化したものだった。
この数週間、トランプ大統領はこの危機についてほとんど一言も触れなかったが、その深刻さを軽く描写することや、明らかなフェイク情報を流すことはなかった。しかし、政府の情報担当官と公衆衛生担当高級官僚の警告は却下した。トランプ大統領は、起こり得る米国人の大規模な感染に対し、強い関心を示すことはなかったように思われる。
新型コロナウイルスによって、この国の危機自己処理能力に対する間違った自信が露呈したと言うなら、トランプ氏の大統領としての限界も露わになったと言えるだろう。彼は事実や科学、経験を軽視している。
数ヶ月にわたり新型コロナウイルスの深刻さを希薄化し、厳格な措置を講じて抑制するべきだと要求する声を拒み、戦時の大統領という肩書を気取った後で、トランプ大統領はついに新型コロナウイルスという現実に屈したようだ。トランプ大統領は記者会見で、「米国人が今後30日間この指導方針を遵守することは絶対に重要だ」と語り、「これは生死にかかわる問題だ」と述べるに至った。それは3月31日のことだった。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年4月17日