廃水の研究がモニタリングの新たなツールに
複数の研究からすでに明らかになっているように、新型コロナウイルス感染者の排泄物には大量のウイルス遺伝子が存在し、ウイルスは最終的には廃水に混入することになる。これが廃水の研究に基づく新型コロナウイルス感染症学の理論的根拠だ。
今年2月、鍾南山院士と李蘭娟院士のチームがそれぞれ新型肺炎患者の排泄物から新型コロナウイルスを分離させ、これにより新型肺炎患者の排泄物には生きたウイルスが確実に存在することが判明した。これは、ウイルスが病気を起こすメカニズムを認識し、社会全体で感染症の伝播ルートを遮断して的を絞った予防管理を着実に行うことをサポートする上で重要な意義をもつ。
新型コロナが世界の複数の地域で爆発的に拡大し、蔓延を続けるに従って、複数の国の科学研究者は廃水サンプルによる感染症学の研究を新型コロナウイルスの伝播をモニタリングするツールとして利用し始めた。
フィンランド国立健康福祉研究所が今月2日に発表した報告では、初期段階の研究結果によると、廃水に含まれていた新型コロナウイルスのリボ核酸(RNA)含有量は特定地域におけるウイルスの伝播状況を基本的に反映している。この研究方法はウイルスの遺伝子型の鑑定にも利用でき、研究者は、「起源の異なる新型コロナウイルスは感染力も異なるのではないか」と推測している。
シンガポール国家開発省の黄循財大臣は今月9日、「従来からある検査方法以外に、シンガポールは目下廃水に新型コロナウイルスが含まれるかどうか検査するなどの方法を採用して特定の人の集団における新型コロナ患者の有無を調べている。たとえば専用の宿舎で生活する外国人労働者などだ」と述べた。
オーストラリア連邦科学産業研究機構が今月19日に発表した報告では、感染症状が出た人がいるかどうかにかかわらず、廃水サンプルの分析によりコミュニティ内の新型コロナウイルス感染状況を把握することができるとしている。同機構が参加するチームが低コスト、迅速、高効率の方法を探り当てており、廃水を通じた新型コロナウイルスのコミュニティでの伝播状況をモニタリングすることが可能となり、これは感染症の第2波の予防に役立つという。
またイタリア、米国、オランダなどでも同様の研究が行われている。研究者は、「関連研究は、科学者が自覚症状が出ていない感染症の初期における人々の中でのウイルス伝播状況の早期検査を後押しするだろう。とりわけ無症状の人の感染状況をカバーでき、ここから方向を絞った予防・管理がよりよく行えるようになる」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年6月28日