戦力外通告を受けた選手らを対象にした12球団合同トライアウトが7日、千葉・鎌ケ谷のファイターズタウンで行われ、68選手が参加。楽天の来季監督に就任するシダックス・野村克也監督(70)が視察を行い、今オフ、楽天を自由契約となった小倉恒投手(35)ら前楽天の5投手の獲得を検討することになった。解雇通告を受けた球団に戻る異例の“再雇用”で再生を図る。
野村監督がなりふり構わぬ作戦に出る。トライアウトの視察で、楽天を今オフにクビになった5投手を高評価。「楽天の選手の評価はノーコメントにしてください。私が言うと他球団に獲られる可能性が出てくるので個人的な名前は言えない」とけん制しながら、フロントには獲得に向け再調査するように伝えた。
野村監督は4時間に及ぶテストが行われる中で、他球団の編成担当者からの情報収集に乗り出した。ある編成担当は「“この選手はどうかな”と質問攻めにあった。辞めた楽天の人に興味を持っていた」と証言。新監督としての“初仕事”は前楽天選手の再雇用を検討することだった。
その第1候補は小林と小倉だ。オリックス時代の95年の日本シリーズで、当時のヤクルト・野村監督の目の前で“オマリーとの14球”の名勝負を演じた小林は、打者3人のシート打撃でピシャリ。ヤクルト時代の教え子の小倉も完ぺきな投球を披露し「結果は良かった。(野村監督とは)ヤクルト時代もやっているので、声を掛けられたら行きたいです」と話した。
野村監督は9月29日に、楽天に在籍する息子のカツノリから電話で「(戦力外になった選手で)“オヤジなら使いこなせる選手はいるんじゃない”と言われた」という。高村、川尻、小池は高年俸がネックになって解雇された選手であり、自由契約となれば、球団としても年俸を抑えられるメリットはある。
今後は大学・社会人ドラフトの兼ね合いを見ながら再雇用の検討を進めていく。昨年、オリックスの吉井が自由契約後に“テスト入団”して話題になったが、5投手が一気に出戻りとなれば超異例。再生工場の異名を持つノムさんが、前代未聞の再雇用再生に挑む。
◆ヤクルト時代の野村監督の再生
☆角盈男 92年に日本ハムからトレード移籍。91年はわずか17試合の登板も、92年はチーム最多の46試合で2勝4敗、防御率3・20の好成績。
☆田畑一也 96年にトレードでダイエーから移籍。プロ5年でわずか2勝だったが、移籍1年目でチームトップの12勝。
☆辻発彦 西武を95年オフに自由契約となり、入団。打率・238だった前年から96年は・333と復活した。
☆小早川毅彦 広島在籍時の96年にコーチ就任の要請を蹴って自由契約に。野村監督が主砲として期待をかけ獲得。1年目の97年開幕巨人戦で3本塁打するなど111試合に出場した。
☆広田浩章 ダイエーを96年オフに自由契約になる。入団テストで野村監督に拾われ入団。97年に59試合で1勝3セーブと大車輪の活躍。
☆野中徹博 96年オフに中日を自由契約に。テスト入団。97年にはプロ初勝利を挙げるなど44試合で2勝3敗、防御率2・28。日本一に貢献。
≪横浜、左腕チェック≫中継ぎ左腕強化を狙う横浜は平松(前中日)、山本(前ヤクルト)、佐久本(前阪神)に興味を示した。視察に訪れた亀井国際・編成部長が「平松、山本、佐久本は面白い」と発言した。今後はフロント、現場と話し合って決める方針で、秋季キャンプに“テスト生”として招待するケースもあるという。今季の中継ぎ左腕はホルツ1人と手薄だっただけに、獲得の可能性はありそうだ。
≪芝草147キロ出た≫日本ハムを自由契約となった芝草が、全投手の中で最速の147キロをマーク。直球とシュートで内角を突き、死球を1つ与えた以外は三振、二ゴロに抑えた。今季は開幕当初からチームの構想から外れ、1軍登板ゼロだったが「自分の持ち味はアピールできたと思う」。獲得に興味を示しているソフトバンクの石渡編成部編成部長は「これから検討していきたい」と前向きに話した。