北越製紙に対し、敵対的TOB(株式の公開買い付け)の実施を表明している王子製紙がM&A(企業の合併・買収)の“指南役”にあたる財務アドバイザーに証券最大手の野村証券を選定し、話題を呼んでいる。王子がTOBを実施した場合、野村証券は国内の証券会社として初めて敵対的買収を仕掛ける側につくことになる。敵対的買収への関与を避けてきた証券界の慣行が変わる兆しとして注目される。
野村グループは「王子には明確な事業戦略があり、北越との経営統合で株主価値の増大が実現できると判断した。敵対的かどうかは判断材料ではない」(仲田正史・財務統括責任者)と説明。これまで、ライブドアや楽天など敵対的買収を行う企業には外資系証券がアドバイザーにつくことが多く、国内の証券会社は「敵対的買収に加担したとみられるのは得策でない」(証券関係者)との判断から指南役への就任を事実上拒否してきた。今回、北越製紙側は欧州系のクレディ・スイス証券を選定する見通し。
証券業界では「国内でも敵対的買収が普通になりつつあり『敵対的だから引き受けない』とは言っていられない」との見方が強い。【上田宏明】
毎日新聞 2006年7月27日