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日本製紙:北越株取得へ 王子の敵対的TOBに対抗

製紙業界第2位の日本製紙グループ本社は3日、業界トップの王子製紙の中堅・北越製紙に対する敵対的TOB(株式公開買い付け)を阻止するため、対抗策として北越株を発行済み株式総数(議決権ベース)の10%未満の範囲内で取得する方針を明らかにした。TOB成立を妨げる一方で、北越、三菱商事との資本・業務提携に向けた協議を申し入れるという。これに対し、王子はTOBを続行する姿勢で、国内大手企業同士で初の敵対的TOBは業界1、2位企業による北越株の争奪戦に発展した。

 日本製紙は既に市場で北越株を買い進めており、議決権ベースで8.49%を取得したことも公表。北越が7日に三菱商事への第三者割当増資を完了すれば約6.4%に下がるが、状況に応じて10%未満まで買い増す。増資後は三菱商事が約24%を取得することになるため、日本製紙と合わせて最大約34%を両社が握ることになる。

 王子のTOBは北越株の過半数を集めることが成立の条件。三菱商事は今のところTOBに応じない方針を示しているため、王子は残り約66%の北越株の中から50%超を集めなければならず、成立のハードルが高くなる。TOBが成立した場合も、王子が株式交換で北越を完全子会社化するのに必要な3分の2の議決権獲得は阻止できる。

 3日、記者会見した日本製紙グループの中村雅知社長は王子のTOBが成立した場合について「製紙業界の秩序を乱す。連結売り上げ規模で(他の製紙会社は)明確な差をつけられる。著しい不利益となる可能性があり、看過できない事態だ」と指摘。自らの北越株取得については「北越の経営権取得が目的ではなく、緩やかな提携で相乗効果を出したい」と強調した。

 10%未満という取得比率の上限については「独占禁止法上の制約などの条件を総合的に判断した」と説明。TOBを確実に阻止するために上限を引き上げる可能性については「当社は北越を救うホワイトナイト(白馬の騎士=敵対的買収の阻止に協力する友好的企業)ではない」と否定した。【上田宏明】

 ◇困惑の三菱商事

 日本製紙の中村雅知社長は3日の記者会見で「(北越製紙の第三者割当増資引き受けを決めている)三菱商事の理解を得られると確信している」と述べたが、三菱商事側は「コメントする立場にない」(広報室)としながらも困惑を隠しきれない様子だ。三菱商事はそもそも王子製紙、日本製紙の「2強」に対抗する業界の第3勢力を築きたい狙いがあった。その上、日本製紙と連携すれば、取引先である王子製紙を敵に回すことにもなる。このため、三菱商事が「緩やかな協力関係を築きたい」という日本製紙の呼びかけに応じるかは不透明だ。

 三菱商事は7日に北越製紙が実施する第三者割当増資を1株607円で引き受け、北越株約24%を保有する筆頭株主になる予定。9月4日を期限に王子製紙が実施中のTOB(株式の公開買い付け)にも応募しない方針だ。ただ、これは「TOBに応じて短期的に利益を得れば対外的に説明できない」(幹部)との考えからで「我々は北越製紙を守る白馬の騎士(ホワイトナイト=敵対的買収の阻止に協力する友好的企業)ではない」(同)と言い切る。

 一方、日本製紙は3日の会見で海外進出の必要性を強調。三菱商事が日本製紙と協力関係を作れば、総合商社として持つ海外取引のノウハウを発揮できる。このため「紙パルプ事業を強化する上で、三菱商事にとって悪い話ではない」(大手商社)と指摘する声もある。【三沢耕平】

毎日新聞 2006年8月3日 

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