「ニコン」(東京都千代田区)の元技術系社員(47)が、光ファイバー通信に絡む開発段階の機器を同社から持ち出し、在日ロシア通商代表部(港区)の部員(35)に提供していた疑いが強まり、警視庁公安部は10日にも、部員と元社員を窃盗容疑で書類送検する方針を固めた。公安部は、機器が軍事転用された可能性もあるとみている。部員は既に出国しており、警察庁が外務省を通じ、再入国拒否の手続きを取る見通し。
部員は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の科学技術担当でもあるとみられる。公安部が事情聴取を行うため出頭要請したところ、今月2日に出国した。元社員は今年3月にニコンを退社している。
公安部の調べでは、元社員は部員の求めに応じ、同社が開発中の「可変光減衰器(VOA)」を研究室から持ち出し、昨年3月、都内の飲食店で渡した疑いが持たれている。VOAは、光ファイバーで通信可能な情報量をより大きくする技術に必要とされる機器。
部員は03年に在日通商代表部に赴任。04年春、都内での科学技術展示会場で元社員と知り合い、十数回にわたり接触していた。部員は、他にも元社員の技術論文を受け取ったり、開発段階の他の部品類の提供を要求していたという。
毎日新聞 2006年8月10日