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[FT]「イスラム国」、策に溺れ自滅の可能性

思想的にゆがんだ世界各地のジハード(聖戦)集団を除くすべての人にとって、昨年12月に拘束されたヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉を生きたまま燃やした殺害事件は、過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が計り知れないほどの邪悪さを持つことを証明した。


だが、いま最も重要なのは、この自称イスラム異端審理に対する地元のスンニ派と各部族の反応がいかに発展していくかである。これは果たして、ISISが策に溺れて自滅への道を歩む始まりになり得るのだろうか。


訪米していたアブドラ国王の帰国を待つヨルダンの人々。政府によるテロ掃討の姿勢へ賛同するスローガンを叫ぶ(4日、アンマン)=AP


 


訪米していたアブドラ国王の帰国を待つヨルダンの人々。政府によるテロ掃討の姿勢へ賛同するスローガンを叫ぶ(4日、アンマン)=AP


得意げにビデオ撮影されたカサスベ中尉の焼殺に対するヨルダンの反応は、2005年にアンマンのホテルで起きたアルカイダによる自爆テロ事件で有罪判決を受けたジハード主義者2人の死刑を執行することだった。この2人は、すでに死亡したアブ・ムサブ・ザルカウィ(※)のネットワークの一員だった。


ザルカウィはヨルダン生まれでイラクのアルカイダ系組織の指導者。ISISの誕生に一役買い、人の首を切る、地域で最も残虐なジハード主義者と見なされていた。


ザルカウィの組織がISISの前身だ。そのISISをいま率いるのは、ザルカウィ以上に残忍な元部下で、戦闘部隊が制圧したシリア東部とイラク西部の広大な地域で国家樹立を宣言した自称「イスラム国」カリフ、アブバクル・バグダディだ。今回の忌まわしい殺害に対するバグダディとISISの動機は検証に値する。


■近隣諸国の間の断層探る


ISISはこれまで、斬首、はりつけ、石打ち、むち打ち、奴隷化に手を染め、シーア派、キリスト教徒、ヤジド派などの「異教」「背教者」の少数派を一掃する意思を明言してきた。今回の殺害は、こうしたISISの残虐行為をさらに重ねることに加え、3つのことを遂行したかったように見える。


ISISに対し米国主導の空爆作戦がもたらしている焦土化を衝撃的なやり方で喧伝(けんでん)すること。この空爆作戦に対する無制限の全体主義的対抗を表明すること。そして、「十字軍」連合と手を組むヨルダンなどスンニ派アラブ諸国が負う潜在的なコストを浮き彫りにすることだ。


カサスベ中尉を殺害した卑劣な行為はほぼ間違いなく、近隣諸国の間の断層を探ろうとするISISの取り組みの一つだ。


※=1966~2006。無差別テロを繰り返し、イラクの国連事務所爆破やマドリード列車同時爆破にかかわったとされる。「イラクの聖戦アルカイダ組織」を率い、04年にバグダッドで起きた日本人旅行者殺害事件にかかわった


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