大学で金融を勉強中の初野新衣紗(はじめの・にいさ=上)と父の藤志郎(とうしろう=中左)、母の利子(りこ=中右)、隣に住むファイナンシャルプランナー・税理士の有賀鯛吉(ありが・たいきち=下)
たいきち 確かに厚生年金/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5EAE4E6E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXがゼロになることはあり得ます。在職老齢年金/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5EAEBE0E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXと呼ぶ制度で、60歳代以降も働いて給料収入などと年金の合計が一定額を超えると、年金が減るのです。厚生年金の受給は原則65歳からですが、今年60歳になる男性なら経過措置として61~62歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取ることがあるので、会社の先輩も1~2年後、年金に影響が出るのかもしれません。
とうしろう 老後も給料収入があると年金が減るのは何となく知っていたけど、まさかゼロなんて。この前、バーバラさんに話を聞いて、60歳からも働こうと決意したばかりなんだが、心配で頭がズキズキしてきた。
とうしろう なんだ、良い手があるじゃないか。
たいきち もっとも年金だけで単純に判断してはいけない部分はあります。厚生年金と原則セットになっている健康保険をどうするかです。いくつか選択肢はありますが、それまで会社と折半だった健康保険料の負担は重くなることが考えられます。厚生年金への加入、非加入はこの負担増も考慮に入れて選択しないといけません。
りこ 60歳代になれば医療費も増えそうだから、健康保険は欠かせないわね。
たいきち 会社の先輩のように60代前半ならもう一つ、雇用保険/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5EAEAE5E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXの給付を受けた時にも年金が減る場合があると知っておくといいですよ。特別支給の老齢厚生年金など65歳になるまでの年金は雇用保険の失業給付と同時には受けられません。ハローワークで求職したら、その翌月から受給終了まで年金は全額停止です。
とうしろう なんてこった。
たいきち 雇用保険には60歳以上65歳未満で働いて賃金が60歳時点に比べ75%未満に低下するなど一定条件を満たすと「高年齢雇用継続給付」というお金がもらえる制度があり、最大で賃金の15%になります。この給付が出ると60歳代前半では給料、年金に加えて収入が3本柱になる場合があるんです。
とうしろう 収入源が3つもか。急に景気の良い話になった。
たいきち ただし厚生年金に加入し、この給付を受けた人の年金は最大で賃金の6%減ります。すでに28万円の基準を超えていて在職老齢年金として支給が減っている人はそこからさらに減ります。
とうしろう やはり、良いことばかりではないんだ。
たいきち 給料収入と年金、高年齢雇用継続給付の3つを同時に受け取る場合、どんなバランスでもらうと最も有利かは、税金も関係して複雑です。社会保険労務士といった専門家に試算してもらう方がいいかもしれません。
とうしろう 複雑だなぁ。もう頭が割れそうに痛い。私も10年後はそんな面倒な悩みを抱えるのか。
たいきち いえ、藤志郎さんは少なくとも60歳代前半ではその悩みとは無縁だと思います。60歳代前半で受け取っている厚生年金は経過措置で、受給開始年齢は徐々に引き上げられます。50歳の藤志郎さんは65歳になるまで受給しない世代ですから、60代前半で働いても年金は減りません。65歳以上も働くなら減る可能性はありますが。
とうしろう そうか。60代前半は働いて、あとはのんびりすればいいんだ。頭の痛みもスーッと引いたよ。
りこ 何、言っているの。公的年金に頼れない分、65歳以降も働かないといけないかもしれないのよ。とにかく健康維持。やっぱり絶対に禁酒してもらうわ!
とうしろう また、頭痛が襲ってきた……。
■「年金ある強み 収入より『やりたいこと』で職選び」
オフィス・リベルタス代表 大江英樹さん
会社員が60歳定年後も働くなら、まず在職老齢年金の仕組みを理解し、年金を減らさずに済む収入水準がいくらかを考えるのが一般的です。面倒に感じるかもしれませんが、年金がある分、必ずしも仕事で高収入を得なくてもいいので「自分がやりたいこと」を優先して職を選べるとポジティブにとらえてはどうでしょう。
定年後の主な働き方は元の勤務会社からの再雇用、転職、起業の3つです。再雇用を選ぶ人は多いですが、最もやりたいことを実現できるとは限りません。転職や起業のハードルは高いかもしれませんが、現役世代よりも期待収入は低く設定できるので業種・業務の選択肢は広がります。定年の10年ほど前になったら、再雇用以外の働き方も視野に入れて将来役に立ちそうな人脈の棚卸しなどの準備や収入などのシミュレーションを始めるのが理想です。