【北京=山田周平】戦時中に日本へ強制連行され過酷な労働を強いられたとして、三菱マテリアルに謝罪と損害賠償を求める訴訟を起こしている北京市の中国人元労働者らは11日、同社に「誠意がない」として和解交渉を中止したと発表した。和解を巡る文書や金銭面の補償を調整したものの、同社の謝罪の意思が明確でなく、受け入れられないと判断したという。
40人の元労働者と遺族は北京市第1中級人民法院(地裁)に訴状を出し、2014年3月に強制連行問題の訴訟として初めて受理されていた。
北京市内で記者会見し弁護団によると、原告側と三菱マテリアルは受理の直後から和解交渉を開始。同社は強制連行の事実を認め、原告以外を含む合計3765人の元労働者側に1人10万元(約192万円)支払うなどの和解案を示した。
しかし、和解の文書で謝罪の意思が曖昧なことや、10万元が賠償金だと明示されなかったことを不服とし、交渉を中止した。弁護団の康健弁護士は「基本的な事実で譲歩すれば、真相がなくなってしまう」と主張した。
弁護団は一方で「中止であり、終了ではない」と交渉再開に含みを持たせた。和解交渉とは別に、同法院は3月中にも初の審理を開く見通しだ。
三菱マテリアルは「個別の訴訟案件についてのコメントは差し控える」(広報・IR部)としている。弁護団によると、三菱マテリアルと同時に訴えた日本コークス工業(旧三井鉱山)とは現時点で交渉がない。