北九州市で昨年5月、男性歯科医(30)が刺され重傷を負った事件で、福岡県警は16日までに、男性を組織的に殺害しようとした疑いが強まったとして、組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)容疑で北九州市小倉北区大畠1、暴力団工藤会(本部・同市)系組幹部、中西正雄被告(49)=別事件の同罪などで起訴=ら組員6人を再逮捕し、新たに組員3人を逮捕した。
県警などによると、男性歯科医の父親は北九州市漁業協同組合の幹部。昨年6月には漁業補償などの交渉窓口役となる組合長を決める総会が控えており、県警は工藤会が漁協の業務などに介入する狙いがあったとみて、同会上層部の関与も視野に全容解明を進める。
9人の逮捕容疑は昨年5月26日午前8時半ごろ、北九州市小倉北区真鶴1の駐車場で、組織的な工藤会の活動として、同市の男性歯科医に対し、刃物のようなもので体を多数回突き刺すなどして殺害しようとした疑い。県警は9人の認否を明らかにしていない。
県警によると、男性歯科医は駐車場で車を降りたところ、いきなり襲われた。県警は現場周辺の防犯カメラの映像を分析するなどして捜査を進め、事件に使われたとみられるバイクも発見、押収した。
捜査関係者や漁協によると、男性歯科医の父親には事件後、「家族を殺す」などと書かれた脅迫文が届いていた。昨年6月の総会で父親は組合長に立候補しなかった。
1998年には男性歯科医の祖父の元漁協組合長(当時70)が北九州市内の路上で射殺される事件も発生。県警は昨年9月、殺害に関与したとして工藤会トップの総裁、野村悟被告(68)ら最高幹部2人を逮捕し、福岡地検が殺人の罪などで起訴している。