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[FT]ロシア国民の葛藤「テレビと冷蔵庫の戦い」

ロシアの市民がウクライナでの戦争をどう見ているのか、モスクワにいる友人が気の利いた表現で教えてくれた。彼女によれば、これは「テレビと冷蔵庫の戦い」だという。テレビは、「ファシスト」のウクライナ人や策を弄する欧米諸国との愛国的な闘争の物語を流してロシア魂をかき立てる。ところが冷蔵庫は、空きスペースが次第に増えていることや中身の食品が値上がりしていることを示してロシア魂を萎えさせる、というのだ。


プーチン大統領を模した山車。向かって左のたくましい腕には「軍事」とあり、右の細い腕には「経済」と書かれている。ドイツではカーニバルが各地で開かれた(16日、デュッセルドルフ)=AP


 


プーチン大統領を模した山車。向かって左のたくましい腕には「軍事」とあり、右の細い腕には「経済」と書かれている。ドイツではカーニバルが各地で開かれた(16日、デュッセルドルフ)=AP


冷蔵庫とテレビの戦いがどんな状況にあるのかは、世論調査から読み取ることもできる。先日行われたある調査によれば、ロシア国民の44%は米国を敵だと考えている。ウクライナ紛争が始まる前は4%だったから、大幅に上昇したことになる。しかし、別の世論調査によれば、ウクライナはロシアの一部であるべきだと考える国民は19%にとどまり、昨年3月の約50%から大幅に減っている。


ウクライナでの戦争がまた本格的に始まれば、ロシア国民の心を巡る両者(テレビと冷蔵庫)の戦いが再開されることになるだろう。その日は早々に訪れるかもしれない。先週成立した新ミンスク停戦合意(ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国首脳がまとめた停戦合意。昨年9月の「ミンスク合意」は守られなかった)の交渉を手助けしたドイツのアンゲラ・メルケル首相でさえ、この合意は「かすかな希望」をもたらすとしか言おうとしなかった。


もしロシアやその代理の部隊が再び攻撃を始めれば、ウラジーミル・プーチン大統領率いる悪賢いロシア政府の方が意志薄弱な欧米諸国より断然上だという嘆きの声が西側で広がることになるだろう。


■ますます弱まるロシア経済


しかし、ロシア政府は軍事・外交面では優勢かもしれないが、それ以外の重要な面では弱く、その弱さはますます著しくなっている。ロシア国民の冷蔵庫が空っぽなのは、この国の経済が深刻な状況に陥っていることにほかならない。最終的には、ここでロシア側の計算が変わってくる可能性がある。


プーチン氏は今日の紛争と、ナチス・ドイツに対するロシアの「大祖国戦争」との間に類似点があるとしている。ただ、そこでほのめかされている見方、すなわちロシア国民は今後広がる物資の欠乏に再度耐え抜く用意があるとの見方には、恐らく根拠がない。


もちろん、ロシアはちゃんと機能している民主主義国ではないため、国民の間に不満が広がっても政府に直接圧力がかかるわけではない。しかし、プーチン氏は、生活水準の向上という国民への約束が自身への人気の重要な部分だと承知している。物資の欠乏や孤立はあまり魅力的な話ではない。


ある中年のロシア人は「ソビエト連邦時代を覚えている人は、ジャガイモばかり食べる日々がどんなものか分かっている。だが若い世代には、それがどんなものか見当もつかない」と話す。おかしな話だが、首都モスクワのスーパーマーケットでさえ始まりつつある食料品不足は、ロシアが自ら負った傷だ。物資不足の大半は、欧米諸国からの多種多様な食料品の輸入を禁止したロシア自身の報復制裁措置によるものだからだ。


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