「家計が毎月赤字なのに、夫の給料が3万円減ることになりました。退職金も思ったより少なそうで、高校1年の息子が大学に進むと老後資金が足りません」。専業主婦のWさん(47)が焦って相談に来ました。会社員のご主人(52)の定年まで8年ですが、貯蓄は400万円しかなく、その半分が進学費用に消える予定。月々と将来の生活不安がダブルで襲ってきた格好です。
やりくりでカバーできそうにない収入減や支出増、貯蓄不足になった場合は、働いていない妻などが収入を得ることも選択肢の一つ
ご主人の手取りは月31万円でした。Wさんは割安な食材を選び、総菜や外食にできるだけ頼らず料理したり、無駄が出ないよう必要な分だけ買ったりして節約に努めてきました。それでもお子さんが高校生になってから塾やスマートフォンの出費で、2万円を超える赤字になったそうです。
そんな折、ご主人の会社が従業員の増加に伴って就業規則を定めた結果、月収が28万円に減ることが決まりました。このままでは赤字が拡大し、その補填のぶんボーナスから貯蓄に回せる額も減ります。また数年前に定年になった人から800万円ほどだと聞いていた退職金も、新たな規程では500万円程度になることが分かりました。
この家計をどう改善するか。定年までにそれなりの貯蓄をするには支出の見直しだけでは追いつかないため、私はWさんに働くことを勧めました。「ずっと専業主婦だったから自信がない」と乗り気でなかったWさんですが、仕事を持つ友達が「うちでアルバイトしてみない?」とタイミングよく誘ってくれたこともあり、週1~2日働くようになったのです。月3万円ほどの収入ながら、自分の働きが家庭内のやりくりとは違った支えになることを実感しました。
バイトを3カ月ほど続けたころ、Wさんはもっと本格的に働ける仕事を探し始めました。すると「50歳近い年齢では難しいと思っていた」正社員の働き口が運よく見つかったのです。給料は手取りで11万円ほどと決して高くはありませんが、自転車で通える距離で残業も少なく「家族のために夕飯がちゃんと作ってあげられる」と満足していました。
自ら働くことなど頭になかったうえ、いろんな節約術に関心を持ちながらも実行には移せていなかったWさん。働き始めてお金の大切さをより実感したことで、支出の見直しにも積極的になりました。通信費はWさんと息子さんのスマホを格安SIMにして1万3000円に半減。水道光熱費は節水シャワーヘッドやLED電球に交換し1割にあたる2000円を削減しました。食費や日用品代、被服費も無駄を抑える意識が浸透し、1000~5000円が浮きました。
Wさんの頑張りは息子さんも刺激しました。「自分も勉強に支障のない範囲でバイトし、塾の月謝の一部と格安SIMの通信料を払いたい」と計6000円を負担。ほかの生活費の節約にも協力的になりました。Wさんが自分の小遣いとして1万円を確保しても、全体で1万8000円の支出削減に成功しました。