人身事故で新幹線のぞみ176号から取り外された先端部分=2018年6月14日午後8時20分、山口県下関市のJR新下関駅、金子淳撮影
JR山陽新幹線のぞみ176号が人とぶつかり、先頭車両のボンネットが破損した事故で、運転士は衝突音を聞いた後、総合指令所から破損による停止を求められるまで指令所に異音を報告しなかったことが、JR西日本への取材で分かった。同社福岡支社は「安全上、速やかに報告すべきだった」との認識を示した。
博多―小倉間で外部から人侵入か 山陽新幹線の人身事故
事故の影響で、博多―広島間は14日夕から終日運転を見合わせていたが、15日は始発から平常通りの運行を再開した。
JR西日本によると、運転士は博多―小倉間を走行中、「ドン」という衝突音を聞いた。だが、駅間に人が立ち入ることはなく、小動物とぶつかったと思い、報告すべきだと判断しなかったという。
昨年12月には、のぞみ34号の乗務員が異音に気付きながら、台車に入った破断寸前の亀裂を発見するのが遅れる事案があった。同社が2月に公表した「安全考動(こうどう)計画」では、異常を感じたり安全が確認できなかったりした場合は迷わず列車を止め、結果的に異常がなくても安全を最優先にすることを全社員で共有するとしていた。
山陽新幹線では、異音などによる停止が今年1月~4月17日に18件あり、昨年4~12月の1件から大幅に増えていた。しかし今回、運転士は異音の報告をせず、すれ違った別の列車の運転士がのぞみ176号の破損に気づいて総合指令所に報告し、指令所が停止を指示した。福岡支社の担当者は取材に「運転士が報告項目に当てはまらないと独自に判断した。反省すべき点だ」と話した。
石井啓一国土交通相は15日の閣議後会見で、「運転士の音に対する判断が適切だったのか、またなぜ指令に報告しなかったのか、しっかり検証するようJR西に指示した」と述べた。
福岡県警は、列車にはねられた人の身元の特定を進めている。八幡西署によると、14日夜に人体の一部が線路付近で見つかった石坂トンネル(北九州市八幡西区)西側近くの路上で、無人の軽乗用車が止まっているのが見つかり、事故との関連を調べているという。(小川直樹、新屋絵理)