【サンパウロ=宮本英威】ブラジルで15日、ルセフ政権に抗議するデモが全国各地で行われた。有力紙フォリャ・ジ・サンパウロ(電子版)によると、少なくとも152の自治体で約100万人が参加した。国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職疑惑の捜査対象はルセフ大統領の側近にも及んでいる。汚職疑惑の拡大と停滞する経済に対して国民の不満が噴出している。
「ジルマ(・ルセフ大統領)、出て行け」との看板を掲げるデモ参加者(15日、サンパウロ)
デモは複数の市民団体によって呼びかけられ、交流サイトなどを通じて参加が広がった。首都ブラジリア、リオデジャネイロ、北東部サルバドルなどでも行われた。サンパウロでは24人が拘束されたものの、大半の参加者は平和的に抗議しており、大規模な衝突や暴動は報じられていない。
最大都市サンパウロの目抜き通り、パウリスタ大通りは、国旗に使われている黄色や緑色の服に身を包んだ参加者で一面埋まった。調査会社ダタ・フォリャによると、約21万人が集まった。警察当局はサンパウロだけで100万人が集まったとしており、全土での参加者の数がさらに膨らむ可能性がある。
参加者は「ジルマ(・ルセフ大統領)は出て行け」「(与党の)労働党は出て行け」と大声を上げたり、笛を吹いたりしながらメッセージを書いた紙を掲げて行進した。
老若男女様々な参加者が見受けられ、家族連れでの参加も目立った。サッカー元代表FWのロナウド氏、歌手のワネッサ・カマルゴ氏といった著名人も加わった。
ペトロブラスを舞台とした汚職疑惑では、与党の有力政治家が裏金を受け取った疑いがある。贈賄額は21億レアル(約800億円)規模に達するもようだ。飲食店経営のドラさん(50)は「汚職があまりにもひどすぎる。正直な政府が欲しい」と訴えた。
今年のブラジル経済はマイナス成長となる見通し。家族でデモに参加した30歳代の会社員男性は「通貨レアル安に伴う輸入品の価格上昇で生活は苦しくなっている」と話す。
ブラジルでは2013年6月にも、交通運賃の引き上げ、サッカー・ワールドカップ(W杯)への巨額の費用投入に反対するデモが各地で行われた。教育や医療の充実を訴え、全国で100万人規模の動員があった。