大阪市立大の上村卓也病院講師らは19日までに、脚の神経が傷付いたマウスにiPS細胞から作った人工神経を移植し、歩く能力を回復させたと発表した。犬などの動物でも有効性を確かめ、5年以内に臨床試験(治験)をして実用化する。
けがなどで傷付いた末梢(まっしょう)神経の治療にiPS細胞を使った研究は初めて。研究成果は米国の医学誌(電子版)に近く掲載される。
上村病院講師らは、マウスの胎児の細胞から作ったiPS細胞を神経の再生を助ける細胞に分化させ、高分子製のチューブに貼り付けた。歩く動作に関わる左後ろ脚の座骨神経を切ったマウスの患部にチューブを移植したところ、移植前に脚を引きずって歩いていたマウスが12週間後にほぼ正常に歩くようになった。
チューブに貼った細胞が切れた神経の再生を促すなどして神経の一部がつながり、歩く能力が回復したとみている。
今後はマウスなどで安全性を、犬などで有効性を確かめ治験につなげる。交通事故などで末梢神経が傷付く重傷の患者は国内で年約5千人とされ、上村病院講師は「患者がけがをしてから、2~3週間後に人工神経を移植したい」と話している。