【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)が金融支援の延長を決めたギリシャ政府に対し、いらだちを強めている。域内の一部首脳は19日夜から20日未明にかけて協議したが、ギリシャ政府は詳細な改革案をまだ用意できておらず、目立った進展はなかった。「より楽観的になった」と語るギリシャのチプラス首相と不信感を強めるEU側の隔たりは大きい。
EUは19~20日に首脳会議を開き、ギリシャ問題はその合間に約3時間にわたって話し合った。ギリシャや独仏の首脳、トゥスクEU大統領、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁ら追加融資を決めるためのキーパーソンがそろった。トゥスク氏は「チプラス首相の提案で協議することになった」と語った。
協議後に発表した声明は「2月20日の合意を着実に実行する」と確認した。ギリシャ政府が数日内に詳細な改革案を示すことも盛り込んだが、これはユーロ圏財務相会合などが早期の提示を求めてきたことを繰り返したにすぎない。
一方、ギリシャ政府はEUなどからの追加融資を受けられておらず、同国のドラガサキス副首相は「流動性の問題が生じている」と認めている。
ギリシャでは今年1~2月の税収が計画を下回ったのに対し、一部報道によると、政府は3月中だけで国際通貨基金(IMF)に15億ユーロ(約1900億円)強の資金を返済。国内の年金基金などに自国国債への投資を求めるといった金策に追われている。3月中は乗り切れる公算が大きいが、4月以降に資金が底をつく恐れもある。
ギリシャ政府はECBに対し短期国債の発行上限を今の150億ユーロから上げるよう求めている。一方でECBの関係者は「現状のままでは認められない」と否定的だ。
ギリシャは財政が厳しい状況に陥りながらも、EUからの資金支援で良い条件を引き出すために瀬戸際戦略に動いているとみられる。これに対しユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は19日、「時間は刻々と過ぎている」と述べ、ギリシャ政府に迅速な対応を迫った。フランスのオランド大統領は「ギリシャが多くのデータと詳細な改革案を示すのが優先事項だ」と強調した。
ギリシャが詳細な改革案を「数日内」に提示することになったものの、明確な期限は設けられなかったため、ギリシャがさらに時間稼ぎをする可能性は残る。チプラス首相は20日、「期限を設けるのは誤ったアプローチだ」と強弁した。改革案を精査する役割を持つユーロ圏財務相会合の日程も固まっていない。
週明け23日にはドイツのメルケル首相がチプラス首相と会談する。金融市場でギリシャ国債が再び売られ、銀行預金の流出も進むなど再び緊張感が高まってきた。