これまでこの連載では主に離婚に焦点を当てて相談事例を紹介してきましたが、今回は離婚の次に訪れるかもしれない「再婚」に目を向けてみましょう。相談の現場では、離婚経験者の増加に比例して再婚のトラブルも増えていることをひしひしと感じます。
2013年の「人口動態統計/dx/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5E4EAE5E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NX」(厚生労働省)によると、「夫妻とも再婚またはどちらか一方が再婚」の件数は17万3569組となり、13年の婚姻件数66万613組の26.3%を占めました。4組に1組は「再婚カップル」というのが現実なのです。
■再婚に伴い養育費を見直したい
再婚等のトラブルのうち、私のところに相談しに来るケースの多くは「養育費の見直し」です。これは離婚時に決めた子供の養育費(例えば、夫が妻に支払う)が経済状況や家族構成の変化によって、満額支払うことが難しくなってしまうというケースです。
ここでいう経済状況や家族構成の変化とは一体、何なのでしょうか。経済状況の変化とは夫側の収入減(業績不振、不況により残業代カット、転職、病気・ケガなどによる収入減、失業など)、もしくは夫側の支出増(親への仕送り、介護費用、弟妹の養育費、借金など)、その他(離婚時に決めた養育費がそもそも多額すぎて、支払えるような金額ではなかった)などです。
一方、養育費の支払いを受ける妻側からすると、養育費の削減には簡単に応じられません。仮に、自分自身の収入が増えたからといって、その分、養育費を減らすと言われれば、働くモチベーションが下がります。また、子供が成長すればするほど、支出は増えるばかりなのが現実です。
家族構成の変化とは夫の再婚(扶養家族の増加、再婚相手、再婚相手との間の実子、再婚相手の連れ子、再婚相手の両親など)や妻の再婚(世帯収入の増加、妻の収入、再婚相手の収入、再婚相手の両親の援助など)です。
■再婚で経済状況が大きく変化
今回は40代男性からの相談を紹介しましょう。彼は8年前に妻と離婚し、夫婦間には当時8歳だった長女と、5歳だった次女がいました。2人の親権は妻が持つことに決まり、その代わりに彼は妻に対し、子の養育費として子供1人当たり毎月6万円、ボーナス月(毎年6月と12月)には毎月の養育費とは別に子供1人当たり6万5000円を支払うという約束をしたのです。
しかし、離婚時と比べると現在の彼の経済状況、家族構成は大幅に変わってしまいました。前述の養育費の金額は現状に即していないため、彼の家計の収支は赤字に陥っていたのです。どのような事情変更が起こったのかを具体的に見ていきましょう。
離婚から4年間、彼は独身で誰も扶養していなかったのですが、離婚4年目に再婚し、再婚相手の連れ子(当時1歳)と養子縁組をしました。再婚4年目(離婚8年目)には再婚相手(現妻)との間に子供も産まれ、現在、彼は妻と2人の子供の3人を養うようになったのです。そのために家計の支出が大幅に増えてしまい、家計収支が逼迫しているそうです。まず収支のうち、支出の中身について詳しくみていきましょう。
■月々の赤字をボーナスで補填
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では、収入はどうでしょうか。彼は会社員で、毎月の給与が30万円、ボーナス月の賞与が30万円(いずれも手取り額)だそうです。会社員でしかも40代ということを考えると、今後、収入が大幅に増えることは期待できません。また、現在の妻は乳飲み子を抱えているので、今すぐ働きに出ることは現実的ではありません。収入を増やして、赤字を解消するというのも難しいといえます。
■両親からも200万円を借金
毎月の約9万円の赤字で、ボーナス月にはさらに赤字が約11万円発生するという危機的な状況です。彼はこれまで、手持ちの貯金200万円を取り崩しながら生活費に充ててきたようですが、すでに貯金は底をついてしまいました。
次に彼の両親からお金を借りて赤字の穴埋めをしてきましたが、すでに借金の合計は200万円に達しており、すでに両親には「これ以上、貸すことはできない」と断られてしまったそう。両親には当面の間、借金の返済を猶予してもらっているそうです。
今後も家計収支が赤字のままなら、借金を返済するお金がないので、借金返済のためにまた借金をするという自転車操業に陥り、借金がどんどん膨らんで早晩、彼が経済的に破綻するのは目に見えています。このままでは本当に取り返しのつかない事態になりかねません。
一刻も早く手を打たなければなりませんが、いくら赤字を補填する別の方法を探し当てても、あまり意味がありません。もっと根本的なところで家計収支の赤字を解消する方法を探さなければなりませんが、前述の通り、収入の増加や支出の減少が難しいとなると、あとは元妻に養育費の支払い条件を見直すよう求める以外にありません。では具体的に養育費をどのように見直せば、赤字は解消するのか、実際の見直し案については次回、ご説明しましょう。