日銀は22日公表した「金融システムリポート」で、最近の株高や金融機関の取引について「過熱はない」と指摘した。株高は企業収益の回復を反映していると分析。日銀の金融緩和が株価形成を過度にゆがめていないとの見方を示した形だ。一方、銀行の海外融資が増えていることを受け、与信管理や外貨調達基盤の確保を課題に挙げた。
このリポートは半年に1回まとめており、分析結果は金融政策の判断材料にもなる。
株価は3月までの動きをもとに分析した。最近の株高は「企業の収益力が上がっており、収益の裏付けがある」(金融機構局)という。値動きについても過去のトレンドから大きく離れていないと分析した。ただ、4月以降、株価は一段と上昇しており、いまの株価水準では「過熱」の判断となる可能性もある。
日銀は年3兆円のペースで上場投資信託(ETF)を買っており、株高の一因となっている。黒田東彦総裁は8日の記者会見で「(資産価格などが)行き過ぎているからただちに金融を引き締めるという中央銀行の人は多くない」と述べていた。
一方、国内金融機関への課題として、拡大を続ける海外向け融資への目配りを新たに挙げた。大手行の貸し出しはアジアや北米を中心に増えており、3メガ銀の海外貸出残高は2014年9月末時点で5千億ドルを超える水準に膨らんでいる。
リポートでは、海外市場に混乱が起きた場合の金融機関への影響を新たに試算した。具体的には欧州を含めた国内外の長期金利が急速に2%上昇し、円高・株安が景気悪化につながるケースを想定。その結果、自己資本比率は規制水準を上回って推移するものの、多くの銀行や金融公庫が赤字に転落するとの結果が出た。