【ソウル=加藤宏一】安倍晋三首相が29日午前(日本時間30日未明)に米議会で演説したことを受け、米国だけでなく韓国など関係国のメディアも相次いで報じた。先の大戦に対する「痛切な反省」を示す一方「おわび」という表現を用いなかったことに対して、韓国では「不十分だ」とする見方が強い。米メディアも「韓国系や退役軍人が求めていた言葉は使わなかった」などとする論評が目立った。
韓国紙は30日付の朝刊で1面や社説を通じて安倍首相の演説内容を詳しく報じた。東亜日報は1面で「謝罪はおろか自賛ばかり、安倍の40分の詭弁(きべん)」との見出しで、韓国などに対する謝罪が無かったと批判した。日本が戦後の韓国の経済成長に寄与したとの言及についても「恩着せがましい」と指摘した。
中央日報は安倍首相が戦前の日本の行為についての言及で「米国には謝罪したが、慰安婦に言及しなかった」として、対応の違いを批判した。そのうえで社説では今夏に予定される安倍談話についても「このような形ならば、どのように日本と共同の未来を意図することができるかが韓国外交の宿題だ」とした。
一方で日米関係が良好な状態にあることについて「韓国外交の失敗との見方も出ている」(東亜日報の社説)として、韓国政府の対応を批判する論調も目立った。朝鮮日報は社説で尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が安倍首相に対して「正しい歴史認識を表明すべきだ」と要求したにもかかわらず、実現しなかったとして「外交的な限界が見えた」と指摘した。
東亜日報は「韓国としては最も望ましくないのは日米と中国の間の覇権争いの構図が朝鮮半島で作られることだ」と指摘して、日米と中国の間で板挟みになることを憂慮した。