【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は5日公表した春の経済見通しで、2015年の実質成長率を1.5%とし、2月の前回見通しから0.2ポイント上方修正した。ユーロ安や原油安が域内景気の「追い風」になると評価した。15年の物価上昇率も前年比マイナス0.1%からプラス0.1%へ修正し、デフレ懸念がひとまず和らいでいるとの判断をみせた。
春の経済見通しを発表する欧州委員会経済・財務担当のモスコビシ委員(5日、ブリュッセル)=AP
記者会見したモスコビシ欧州委員(経済・財務担当)は「欧州経済はここ数年の春の中で、最も良い状態だ」と強調した。そのうえで「回復を確実にするため、やらなければならないことがまだたくさんある」とも述べ、投資拡大に向けた改革の必要性を訴えた。
見通しを国別にみると、債務問題に揺れるギリシャについて「政治的な不確実性が高く、回復ペースを加速し損ねている」と指摘。15年の成長率を0.5%とし、前回見通しの2.5%から大幅に引き下げた。一方、ドイツはエネルギー価格の下落で家計の消費余力が増すとして、1.9%へ0.4ポイント上方修正した。域内の成長格差が目立つ内容となった。
先行きは不確実さが依然高いとしつつも、見通しが外れるリスクは上方向と下方向のどちらにも「おおむね均衡している」と指摘した。下方向へ振れる懸念材料としてはウクライナ問題など地政学リスク、原油価格の想定より早い反発、米国の利上げやギリシャ問題を巡る市場の動揺などを挙げた。