イスラエルが先月、同国最大の農業技術会議「アグリベスト」を開催したとき、会議に出席するためにイスラエル中部レホボトに足を運んだ代表団の10人に1人は中国から来ていた。
その数週間前には、中国の電子商取引大手アリババ集団の大勢の代表団が、サイバーセキュリティーに関するイスラエルの主要会議「サイバーテック」に出席するためにテルアビブを訪れていた。サイバーセキュリティーは安全保障意識の高いイスラエルが秀でた分野だ。アリババは1月、QRコード技術に特化したイスラエル企業ビジュアリードに出資した。
技術革新の協力拡大合意書に署名するイスラエルのネタニヤフ首相(右から二人目)と中国の劉延東副首相(左から二人目)(2014年5月19日、エルサレム)=ロイター
中国企業はかつてないほどイスラエルに深く、幅広く進出しており、イスラエルの企業と政府当局も歓迎の姿勢で応じている。
イスラエルのクラウドファンディング企業アワークラウドの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ジョン・メドベド氏は「双方の政府から、こうした通商関係が花開き、栄えることを認めるコーシャ認証印が得られているようだ」と言う。
■中国の投資、エネルギーから技術へシフト
今から10年前、中国の対外投資は主にアフリカ、中南米などで天然資源の供給を確保することに焦点が当てられており、国営のエネルギー・鉱業企業が投資主体となっていた。
今では、急増する対外投資は次第に中国が国内市場で持たないブランドと技術をターゲットにするようになっており、国営企業だけでなく民間企業もカネをつぎ込んでいる。中国の対外投資は年内に初めて、2014年に1280億ドルに達した対内外国投資を上回ると見られている。
「イスラエルに対する関心は、中国の明確な戦略的目標から来ている。その目標とは、ほかの人がやっていることをまねる――ただし、もっと安くやる――だけでなく、自らが投資家のリストに名を連ねることにおいても一大勢力になることだ」。イスラエル国家安全保障研究所(INSS)で中国フォーラムを運営するオデッド・エラン氏はこう話す。
中国の光明食品集団(ブライトフード)は最近、イスラエル最大の乳製品メーカー、トゥヌーバの経営権をプライベートエクイティ企業エイパックス・パートナーズから買い取ることについて中国政府から正式承認を得た。この案件はトゥヌーバの企業価値を20億ドルと評価している。
中国人はかつてないほどチーズを食べるようになっている。だが、光明食品は、トゥヌーバに投資するのは「イスラエルが農業と農業経営の質で有名なためだ」と言う。
今回のトゥヌーバ買収は、中国化工集団(ケムチャイナ)が11年に当時マクテシム・アガンの社名で知られていた農薬・作物保護企業アダマを24億ドルで買収して以来最大の中国企業によるイスラエル企業買収だ。