【ワシントン=矢沢俊樹】米連邦準備理事会(FRB)は20日、4月28~29日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。ドル高などの影響で「米経済活動の弱さが継続するかもしれない」と、先行きに対する慎重な見方を強めた。景気回復に確信が持てないことなどを理由に、多数のメンバーは6月16~17日の次回FOMCでの利上げに慎重な姿勢を示した。
<4月FOMC議事要旨のポイント>
〇雇用回復のペースは減速し、3月は賃金の上昇幅も予想を下回った。求職率など一部の労働指標には前向きな動きも |
〇原油安とドル高の影響で米経済の直近の弱さが継続する恐れ。原油安による家計消費の刺激効果は今のところ期待したほどは大きくない |
〇調査ベースの期待インフレ率は安定 |
〇多くの参加者は6月の次回FOMCまでに利上げできるだけの経済データをそろえるのは難しいと判断 |
〇複数の参加者は、利上げを開始すれば将来の不確実性を反映して金利に上乗せされる対価(ターム・プレミアム)が跳ね上がるリスクを指摘 |
議事要旨によると、4月のFOMC時点での米経済について、低金利や家計の実質所得増など多くの要因が消費好転への追い風になっていると指摘した。一方で、10人で構成される委員会のうち多くのメンバーはドル高の純輸出への押し下げ効果と、原油安で企業が投資を手控える動きが「想定されたよりも強く、長引く可能性がある」と指摘。米経済活動の停滞が続くとの確信を強めたとした。
外国為替市場でのドル高は一段落しているものの、2014年半ばからドルの値上がりは著しく、その影響が続きそうだと指摘。欧州主要国でのマイナス金利がドル高の一因と説明するなど、これまでの要旨に比べ為替の負の影響に割く記述が増えたのが目を引く。
海外景気を巡っても中国の成長減速とギリシャ問題に言及。米経済活動は穏やかなペースの拡大が続くとの見通しは堅持したものの、市場では全体の討議を通じ「(FRBの景気見通しの)下方修正リスクを意識する声が強まりつつある」(米大手銀JPモルガン・チェースのエガートソン氏)と受け止める声が広がった。6月ではなく、9月のFOMCで利上げするとみる向きが優勢を保っている。
焦点の利上げの時期を巡り、議事要旨は「多数のメンバーは利上げの条件を満たせるだけの経済データが6月(のFOMC)までに出そろうことはありそうにない(unlikely)と考えた」と説明。逆に6月の利上げを予測するメンバーは「2、3人」へと減り、メンバーの大勢が6月利上げの見送りに傾いたことを示した。
ただ大半のメンバーは全てのFOMC会合で利上げがありうると考えており、判断は「米経済の展開と見通しに依存する」との姿勢を強調した。