三重県は17日に捕獲した希少種ツキノワグマを滋賀県多賀町内の両県境付近で放したのに、滋賀県側に伝えていなかったと明らかにした。放した地点から6キロ離れた多賀町の山あいでは27日、無職女性(88)がクマに襲われて重傷を負った。両県によると、放したクマと襲ったクマが同一かは不明だが、三重県は27、28両日、多賀町と滋賀県にそれぞれ謝罪した。
一方で三重県は28日、放獣した際に付けた発信器の電波から、ツキノワグマが同県と隣接する岐阜県海津市との境にいることを確認したと発表した。29日早朝に職員を派遣し、見つかれば殺処分も含めた対応を検討する。
三重県は27日に多賀町の久保久良町長に経緯を説明して謝罪。久保町長は強く抗議する意向を示したという。三重県獣害対策課は多賀町では2004年以来、クマの目撃情報はなかったとしているが、滋賀県によると、13年に目撃されている。三重県の担当者は28日に滋賀県庁を訪れ、情報提供しなかったとして謝罪した。
ツキノワグマは多賀町に隣接する三重県いなべ市で17日、山中に仕掛けたイノシシ捕獲用のおりに捕らえられているのが見つかった。連絡を受けた同課職員が県のマニュアルに従い、麻酔で眠らせて山中にある林道奥の県境までトラックで運んだ。放獣場所を探し、多賀町内で放したという。
マニュアルには捕獲したクマを山奥に放獣した場合の近隣自治体への情報提供義務はなかったといい、同課の宇田孝彦課長は「今回の反省を踏まえ見直す必要がある」と話した。〔共同〕