【イスタンブール=佐野彰洋】ギリシャ問題を協議する緊急ユーロ圏首脳会議が22日に迫り、支援を受ける側のギリシャ国内では混乱が広がっている。欧州連合(EU)の要求をのんで金融支援を受けるか、突っぱねて別の道を探るか。世論は真っ二つに割れる。アテネでは両陣営のデモが相次ぎ、チプラス首相は難しい決断を迫られている。
国会前で欧州連合(EU)旗を揚げるギリシャ市民ら(18日、アテネ)=ロイター
「欧州連合(EU)にイエス」。ルクセンブルクでユーロ圏財務相会合が不調に終わった18日。ギリシャの首都アテネの国会前広場には協議の早期妥結とユーロ圏への残留を政府に求める約1万人の市民が集まり気勢を上げた。
財政危機に直面するギリシャは72億ユーロ(約1兆円)の支援を巡りEUなど債権団と交渉を続けている。ギリシャが年金カットなど厳しい緊縮策を受け入れなければ金融支援は打ち切られる。
交渉は暗礁に乗り上げており、このままではギリシャは月末に迫る国際通貨基金(IMF)への債務返済が危ぶまれる。資金繰りにめどが立たなければユーロ圏離脱も現実味を帯びてくる。「5年、10年先を見据えた事業の安定を確保できなくなる」とエーゲ海保養地のホテル経営女性は気をもむ。
6月上旬に実施した現地世論調査によると、国民の70%が「いかなる犠牲を払ってでもユーロ圏残留」を望む。最大野党、新民主主義党(ND)のサマラス党首は18日「ユーロ圏の一員であることに交渉の余地はない」と述べ、いまのギリシャにはEUの要求を受け入れて交渉を妥結する以外の選択肢はないと強調した。
一方でEUが求める年金カットや増税などの改革をかたくなに拒否しているのは、反緊縮策を掲げるチプラス氏率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)だ。年金受給者や公務員など既得権層の支持を受ける。17日には反緊縮路線の徹底を求めSYRIZA支持者の数千人が国会前に集結した。
いまのところチプラス氏は債権団に妥協するそぶりをまったく見せていない。交渉の時間切れが迫り世論が「さらなる緊縮策もやむなし」へと傾いてから譲歩するとの見方もある。民間シンクタンク、ヘレニック財団のディミトリス・カチカス氏は「政権は国民の危機感をあおるためにいたずらに交渉を長引かせている」と批判する。そのうえで「週内に何らかの合意に達する可能性が高い。その後は党内説得が鍵になる」との見通しを示す。