【アテネ=竹内康雄】財政危機に直面するギリシャのチプラス首相は6日、ドイツのメルケル首相と電話で話し、7日のユーロ圏首脳会議でギリシャが欧州連合(EU)による支援を巡る新たな提案を示すことで一致した。EUは緊縮策受け入れが支援の条件という従来の立場を崩していない。ギリシャの銀行の手元資金は枯渇しつつあり、政府は7日から再開を目指していた銀行の営業について8日まで休業を延長すると決めた。
国民投票から一夜明け、ニューススタンドに並ぶ新聞(6日午後、アテネ市内)=写真 浅原敬一郎
ギリシャは6月末に資金の流出を防ぐため、銀行営業の停止と資本規制の導入を発表した。欧州中央銀行(ECB)による支援がなければ銀行が営業を再開しても資金繰りに窮するのは確実とみられている。ロイター通信によると、8日までの銀行休業の延長とともに一日60ユーロの現金引き出し制限も維持される。
ECBは6日、緊急理事会を開き、ギリシャ銀行への流動性支援について協議した。
5日のギリシャ国民投票ではEUが支援の条件として示した緊縮策に約6割が反対を表明し、賛成は約4割にとどまった。チプラス首相は「結果は我々の交渉での発言力を強めた」と発言。緊縮策の緩和や、債務減免などをEUに求める立場を示唆した。
しかし、EU側はあくまでもギリシャに緊縮を要求する構え。フランスのサパン財政相は6日、「新たな提案をするのはギリシャ政府だ」と主張。独政府報道官は「交渉の扉は開いている。ギリシャ側の提案を待ちたい」と記者団に語った。
ギリシャに残された時間は少ない。銀行機能の停止が長引けば、主力の観光産業だけでなく、すべての商取引に影響が及び、経済全般が打撃を受けるのは避けられない。
一方、EUとの交渉を主導してきたバルファキス財務相は6日、辞任した。チャカロトス外務副大臣が後任に指名された。EUの一部は、バルファキス氏の存在が交渉を難しくしているととらえており、早期合意のためにギリシャ側が一定の譲歩をした格好だ。
首相はECBのドラギ総裁とも電話協議した。ギリシャ中銀は5日夜、民間銀の資金繰りを支えるため、ECBに「緊急流動性支援(ELA)」の上限を拡大するよう要請した。
ギリシャは14日に円建て外債(サムライ債)の償還、20日にECBが保有する国債償還を迎える。債権団からの新たな支援を引き出せなければ、債務不履行(デフォルト)になる見込みだ。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は6日、注意深く情勢を見守っているとの声明を出した。