【ブリュッセル=森本学】ギリシャの国民投票が欧州連合(EU)の求めた緊縮策を拒む結果となり、財政危機に直面するギリシャへの金融支援交渉の行方は一段と混迷してきた。ギリシャはユーロ残留へ新たな金融支援を求める構えだ。民意を追い風に緊縮緩和や債務減免を求める構えのチプラス政権に、EUはどこまで譲歩するのか。難しい判断を迫られる。
バルファキス財務相の辞任がEUとの交渉にどう影響するか=AP
ギリシャのチプラス首相は民意を反映し、年金支給の削減といった緊縮策の緩和や、債務元本の減免を盛り込んだ金融支援をEUに要請する方針だ。EUは7日、ブリュッセルで緊急のユーロ圏首脳会議と財務相会合を開き、ギリシャ側が示す新たな提案への対応を協議する。
チプラス首相は6日、EUとの交渉を担当してきたバルファキス財務相の辞任を認めた。EU側の評判が良くなかった同氏を外し、交渉を前に進める狙いとみられる。
EUもまずはギリシャのユーロ残留をめざして新たな金融支援策での合意を探る。ただ、ギリシャの国民投票が否決したEUの緊縮策は、ギリシャ側に最大限譲歩した内容だ。さらなる歩み寄りにはユーロ圏各国の反発も予想される。交渉は難航が避けられない。
EUとギリシャの神経戦は続く。
ギリシャの銀行は手元にユーロが無くなりつつある。欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行の資金繰りを支えるために実施している資金供給の額を据え置いているためだ。
この額が増えなければ6月29日から休業している銀行は営業を再開できない。ECBは今のところ資金供給額の上積みに応じる気配をみせておらず、ギリシャの銀行は営業再開をめざしていた7日以降も休業を続けざるを得ない状況だ。
ヤマ場は20日のECBが保有する国債(35億ユーロ)の償還だ。償還資金を手当てできなければ、ECBはギリシャの国内銀行への資金繰り支援を打ち切るかどうか厳しい判断を迫られる。
ギリシャとEUが互いに強硬姿勢を崩さなければ交渉が決裂し、ギリシャのユーロ離脱が早々に現実となりかねない。
「(ユーロ離脱が)現実的なシナリオになった」(スロバキアのカジミール財務相)。対ロシアなど安全保障面で要衝にあるギリシャがユーロ圏から離れるのを許すのは非現実的との見方が根強いものの、ドイツを中心にギリシャへの強硬論もくすぶる。
ギリシャへの金融支援が早急にまとまるには、ギリシャ側がEUと緊縮策で合意し、財政改革関連の法案を成立させるなど改革実行の確証をEU側にみせる必要がある。ただ、国民の6割が「緊縮反対」を表明したギリシャ政府や議会が応じる可能性は乏しい。