世界の株式の配当総額が3四半期連続で前年同期を下回った。ドル高が継続し、配当総額を押し下げた格好だ。
ドル高の影響で、投資家が受け取った配当金は3四半期連続で下回った=ロイター
英国の資産運用会社ヘンダーソン・グローバル・インベスターズの調査によると、2015年4~6月期に投資家が受け取った配当総額は前年同期比6.7%減の4049億ドルだった。ドル高による配当の減少額は、過去最大の522億ドルに達した。
■欧州と日本、伸びをけん引
一方、為替の変動や特別配当、その他の要因を除いた実質ベースでは、前年同期比で8.9%の増加となった。欧州と日本の配当増加が伸びをけん引した。
同社でグローバル・エクイティ・インカム部門の責任者を務めるアレックス・クルーク氏は、「配当総額が減少したことは一見、期待外れに見えるが、(為替変動などを除いた)実質ベースで増えているという非常によいニュースが隠れている。企業のもうけを株主に還元することが既に深く浸透している国以外に、配当還元という文化が新たな市場にも広がりつつある」と指摘する。
欧州の配当額はユーロ安の影響で14.3%減少したが、実質ベースではイタリアやオランダ、ベルギーで増加したことから8.6%増えた。
同様の傾向は日本でも見られる。円安の影響で配当額は7.1%減ったが、配当性向が上昇したことや収益が堅調に伸びたことから実質ベースでは16.8%増加した。日本企業は株主への利益還元率が低いことから、政府や投資家からの引き上げ圧力に直面している。
韓国も同様の圧力にさらされており、同国の実質ベースの配当額は37.4%増えた。
一方、米国の配当支払額は6四半期連続で増え、10%増の986億ドルとなった。
クルーク氏によると、世界的に実質ベースの配当額が増加しているのは、株の配当を受ける投資家も世界的なアプローチで臨むべきだということを示唆している。
収益が回復し、配当総額の約4分の1を占める金融機関は、ドイツのアリアンツからバンク・オブ・アメリカ、シティグループに至るまで配当を増やしており、配当総額の押し上げに寄与している。
金融機関の配当額は、為替の変動を考慮しても0.3%増加しており、18カ月連続して安定的に増加している。
By Judith Evans
(2015年8月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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