【イスタンブール=佐野彰洋】トルコの治安が悪化している。8日までの3日間で、非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)の関与が疑われる襲撃により治安当局者約30人が死亡した。犠牲者数の多さに抗議する群衆の一部が暴徒化し、PKKに近いとされる政党の事務所や政府に批判的な新聞社を襲撃する事態に発展している。
アナトリア通信などによると、トルコ政府が7月に対PKK掃討作戦を開始して以降、軍兵士や警察官の死者数は100人を突破した。トルコ軍は連日、PKK拠点への空爆を実施しているが、テロ攻撃を防ぎきれていない。
6日以降、少数民族クルド人中心の国民民主主義党のアンカラにある本部や全国の支部、政府に批判的な地元紙のイスタンブールの本社などに群衆が押し寄せ、投石などの暴力行為に及んでいる。ダウトオール首相は8日、「メディアや政党への危害は受け入れられない」として事態の沈静化を呼び掛けた。
トルコでは11月にやり直しの総選挙を控えるが、国内の分断は深まっている。一部で事実上の内戦状態にある南東、東部地域では安全な選挙の実施が危ぶまれている。通貨リラが対ドルで過去最安値の更新を続けるなど、国内治安の悪化は経済の重荷となっている。