埼玉県熊谷市の3住宅で計6人が殺害された事件で、被害者宅2階から転落して意識不明となったペルー人の男(30)=住居侵入容疑で逮捕状=が、現場周辺の住宅敷地への侵入を繰り返した疑いがあることが17日、埼玉県警への取材で分かった。県警は男がそれぞれに忍び込んだ際に被害者と出くわし、包丁で襲撃したとみて捜査している。
県警によると、男は住所、職業不詳のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者。所持金がほとんどなかったが、金品を物色したような目立った形跡はなく、侵入目的を調べている。
捜査関係者によると、6人が死亡した3住宅の現場に残されていた運動靴のような足跡が酷似し、6人にいずれも刺し傷があることも分かった。
県警は16日に遺体で見つかった4人は無職、白石和代さん(84)、無職、加藤美和子さん(41)、長女の小学5年、美咲さん(10)、次女の同2年、春花さん(7)と確認した。4人の遺体が見つかった2軒の住宅を殺人容疑で現場検証する。周辺では、他に事件に巻き込まれた人がいないか約560人態勢で安否確認している。
県警などによると、13日午後5時ごろ、熊谷市石原の住宅から「物置に外国人がいた。声を掛けたら逃げた」と110番があり、同5時半ごろにも「外国人風の男が敷地内に侵入した」と110番があった。
これに先立つ13日午後1時ごろには、別の住宅の玄関先にナカダ容疑者が立っているのを住人男性が発見し、隣の消防分署員が同1時半ごろ、通報した。住人に「金がない」「警察を呼べ」と話していたという。熊谷署で事情を聴いたが、荷物を残したまま行方をくらましたため、所在を確認するよう内部で手配していた。
翌14日夕、同市見晴町の住宅で無職、田崎稔さん(55)夫妻が刺殺されているのが見つかり、県警は15日、物置への侵入容疑でナカダ容疑者の逮捕状を取った。
16日午後には同市石原の住宅で白石さんの遺体が見つかり、さらにナカダ容疑者が転落した住宅で加藤さんら3人が死亡していた。加藤さんは1階で、娘2人は2階で、それぞれクローゼットの中に入れられていた。〔共同〕
県警は17日の記者会見で「地域への注意喚起や指名手配はこの段階では難しかった。できる限りのことはした」と説明した。