【ワシントン=吉野直也】来年11月の米大統領選の民主党の本命候補、ヒラリー・クリントン前国務長官(67)は7日、声明を出し、大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)について「現時点で賛成できない」と述べ、不支持を明らかにした。党候補指名の獲得を優先するためにTPP慎重論が多い党内の意見に配慮した。TPPを進めるオバマ大統領と距離を置く姿勢を示した。
クリントン氏は米公共放送(PBS)のインタビューで、不支持の理由に関して「米国の雇用創出や賃上げ、安全保障の促進につながるような高い水準を満たしていない」と説明した。TPPを巡って労働組合が雇用を外国に奪われかねないと反発。党内の指名争いでは社会主義を標榜し、労組など左派の支持を受けるバーニー・サンダース上院議員(74)がクリントン氏を追う。
党内で中道と位置付けられるクリントン氏は、オバマ政権1期目で国務長官を務め、アジア重視を推進した。TPP反対の立場も取っていなかった。不支持表明は「左派と敵対するのは指名獲得や本選に影響が出る恐れがあり、得策ではない」という選挙戦術上の判断とみられる。「現時点で」と留保条件をつけたのも、大統領になった際に方針転換できる余地を残したともいえる。