日本経済新聞社は30日午後、東京・大手町の日経ホールで環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けた緊急シンポジウム「TPP大筋合意~世界はどう変わる」を開いた。はじめに鶴岡公二首席交渉官とアラン・ウルフ元米通商代表部(USTR)次席代表、ブルース・ミラー駐日オーストラリア大使の3者が討論した。
鶴岡主席交渉官はTPPがもたらす恩恵について「8億人の市場が統合される」とした上で「加盟国のすべてに均等な機会を開放する基盤になる」と説明した。「自国民であれ外国であれ、TPPの加盟国であれば平等な処遇を保証される」として「すべての太平洋地域に利益をもたらす」と強調。「他の国々の加盟を歓迎する」と表明した。
インドネシアのジョコ大統領が26日、オバマ米大統領と会談後にTPP参加へ意欲を示したと伝わったことは「素晴らしいことだ」と語った。TPPの大筋合意は「ほんの出発点」と語り、今後の加盟国の拡大に向けて「TPP域外の国に対し、TPPが本当に国民に利益をもたらすことを示す必要がある」と話した。中国の取り込みに関して「経済成長の利点を享受するのにふさわしいと中国なりに検討し、適切な時期に入ることを期待する」とも述べた。
■ウルフ氏、転換点は「日本の参加」
アラン・ウルフ氏は長きにわたったTPP交渉の転換点を巡り「最大の変化は2013年の日本の参加だった」と振り返った。日米の2国間だけでは貿易協定の締結に至らなかったが「TPPであればできる」との判断に至ったという。貿易相手国が「為替操作」をした場合に対抗措置を定める「為替条項」が最終的に盛り込まれなかった点には「我々が求めたものは実現されなかった」と指摘。意図的な通貨切り下げは「輸出競争力を高め、関税(の撤廃分)を飲み込んでしまう」とし、中国に関しては「為替操作の恐れがある」と懸念を示した。
■ミラー氏「世界的なルールに」
ブルース・ミラー氏は「他の国々や経済圏にもTPPを拡大するのが大きな挑戦的課題だ」と指摘。「世界貿易機関(WTO)も視野に入れ、世界的なルールにしていくのが課題」との見方を示した。TPPの合意内容で海外への投資ルールや紛争解決手続きなどが明確化されたことを巡り「投資に対する保護をTPPの元で担保することはできたと思う」と指摘。一方で「政府の裁量も維持された」と評価する姿勢も示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕