「暑いから涼む」。ごく当たり前の一連の行動と思われているが、「暑い」と認識することと、「涼もう」と行動することが、脳内では別々の仕組みで起きていることを名古屋大学の研究チームが明らかにした。熱中症の発症メカニズム解明につながる可能性があるという。
研究成果は10日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
研究チームによると、肌から温度の情報が伝わった際、体は体温調節をしようとする。その反応は2種類あり、一つは「汗をかく」「震える」など自然に体が反応する「自律性体温調節」。もう一つは、温度を不快に感じて涼んだり、服を着込んだりする「体温調節行動」だが、こちらは詳しい情報伝達経路はよくわかっていない。
こうした反応と、温度を「暑い」「寒い」と認識する仕組みが異なることが今回の研究でわかったという。
ラットを使った実験で、床の温度を変えられる箱を使い、ラットが快適な温度と、それよりも高い温度の床を自由に行き来できるようにした。皮膚からの温度を「暑い」「寒い」と脳で認識する情報経路を遮断しても、快適な温度の床を選んで涼むことができ、体温調節行動に影響はなかった。
一方、汗をかくなどの自律性体温調節のための情報経路を遮断すると、温度の認識経路が生きていても、快適な床の温度を選ぶことができなくなった。
名大の中村和弘教授(生理学)は「情報経路が違うので、暑いと認識する温度と不快さを感じて体温調節行動を起こす温度に差が出る可能性がある。これが熱中症の発症メカニズムに関与するかもしれない」と指摘する。(月舘彩子)