【広州=中村裕】中国景気の今後の見通しを示す中国最大の貿易見本市「中国輸出入商品交易会(広州交易会)」が4日閉幕し、中国メーカーと海外の輸入業者(バイヤー)の間で結ばれた商品購入の契約金額は、前年同期と比べ7.4%減の270億1000万ドル(約3兆2700億円)と大きく落ち込んだ。大台の300億ドルも割り込み、リーマン・ショック後に輸出が急減した2009年春の契約水準に迫った。
景気の減速や人件費の高騰を受け、契約額が落ち込み、中国の輸出環境は今後、一段と厳しくなる見通しとなった。
同見本市は、毎年春と秋の年2回、中国南部の広東省広州市で開催される。衣類や家電製品、電子・自動車部品、食品、日用品など中国全土から多くの商品が集められ、中国メーカーが世界各国から集まるバイヤーに対し、自社製品を売り込んで商談し、輸出契約を結ぶ。見本市での契約額が、今後半年間の中国の輸出動向の先行指標となっている。
今回は約2万4000社の中国メーカーが出展し、世界から17万人以上のバイヤーが集まった。特に景気が不透明な欧州からのバイヤーが前年同期に比べ10%以上減り、契約額が落ち込んだ。契約額が前年を下回るのは、12年の春開催以降8回連続。直近で最も落ち込んだリーマン・ショック後の09年春開催の契約実績の262億ドルにも迫る低水準で、輸出回復の見通しが立っていない。
背景には、中国国内の人件費の上昇で生産コストが上がり、中国製の商品が東南アジアなどに比べ割高になっていることがある。中国に商品を買い付けに来る海外のバイヤーは年々、中国から足を遠ざける傾向にある。
さらに中国にとっての重要な輸出先である新興国の経済低迷も痛手となった。自動車用のライトを販売する浙江省の女性営業担当者は「当社の商談ブースに来るバイヤー数は春の開催時からさらに20%減り、特に通貨安に見舞われるブラジルからのバイヤーが激減、ロシアからも大きく減った」と語った。
海外からのバイヤー数の減少で中国メーカー間ではすでに顧客の奪い合いも起きている。低価格で契約を結ばざるを得ず、採算性は悪化し、さらに輸出環境が今後厳しくなることが予想される。