性犯罪(強制わいせつ、強姦)事件で、被害者と加害者が面識のあるケースが3割を占めることが、13日公表された「2015年版犯罪白書」で分かった。「面識あり」の事件はこの20年間で約3倍に増えた。被害者保護の仕組みが進み、泣き寝入りする被害者が減ったことなどが要因とみられる。
白書によると、14年の強制わいせつの摘発件数は前年比8.3%増の4300件で、統計を取り始めた1966年以来最多。強姦は同5.4%減の1100件だった。
強制わいせつと強姦を合わせた事件(不起訴処分などを除く)のうち、被害者の知人や親族らが加害者だったのは1638件(31.6%)。1995年と比べて3.1倍になった。このうち強制わいせつは1114件(26.8%)。強姦は524件(50.9%)。それぞれ20年前の4.8倍、1.8倍に増えた。
法務省は「今まで明らかにならなかった犯罪が表に出るようになった」と分析。被害者支援団体などの整備が進んだほか、裁判で別室から証言するビデオリンク方式が導入されるなどした。また親族や知人間の犯罪について、警察がこれまでより積極的に捜査するようになり、被害者側が訴えやすくなった面もある。
法制審議会(法相の諮問機関)は現在、性犯罪の厳罰化を議論している。強姦罪を起訴する際に被害者の告訴を不要とする「非親告罪化」や、親子間などでの性的行為の強要について新たに処罰規定を設けることも検討しており、法改正で面識のある人による性犯罪がさらに顕在化する可能性もある。
一方、最近20年間の被害者の年齢層を分析すると、強姦では4割、強制わいせつ(女性)では5割が未成年だった。
また14年に強姦で摘発された人のうち、過去に何らかの犯罪を犯した「再犯者」は51.6%。強制わいせつでは45.8%だった。法務省は「再犯防止のためには、初犯や軽微な犯罪の段階で指導プログラムを徹底する必要がある」としている。