小説「火垂るの墓」などで知られ、9日に85歳で死去した直木賞作家で元参院議員の野坂昭如さんの告別式が19日、東京都港区の青山葬儀所で営まれた。葬儀委員長は放送タレントの永六輔さん(82)。親交があった芸能、出版関係者や熱心なファンら約600人が参列し、故人に別れを告げた。
同世代の作家、五木寛之さん(83)は弔辞で「野坂昭如とは私たちの希望のともしびであり、先駆けの旗だった。今あなたを見送ることになり、言葉にならない大きな欠落感を覚えずにはいられない」と去っていく人と時代を惜しんだ。
永さんは思い出を語り、読経した上で、野坂さんの「二度と飢えた子供の顔は見たくない」という言葉を紹介。思いを後世に伝えることを涙ながらに呼び掛けた。
喪主の妻、暘子さんは最後にあいさつ。野坂さんが脳梗塞で倒れた後の13年近くに及ぶ介護生活を振り返り、「野坂が目を閉じた顔は美しく穏やかで、初めて見る表情だった。きっと母親に抱かれた昭如少年だったに違いありません」と声を震わせた。〔共同〕