安倍政権がアベノミクス第2ステージの経済政策を打ち出すなかで、「2020年までに名目GDP(国内総生産)600兆円」という目標を示したことが話題になっている。この目標に対する筆者の第一印象は、「かなりチャレンジングだな」というものだった。なにしろ、名目GDPのピークだった1990年代後半(まだ人口が増えていた時期)でさえ600兆円を実現したことがないのだ。
なぜ、あえて安倍政権は「2020年までに名目GDP 600兆円」という目標を表明したのか。そこには、アベノミクスの第1ステージで非常に大きな成果を上げた「株価」への配慮が感じられる。
「株式市場が過熱している」と思われたくない?
株式投資家の間では、国レベルの株式市場の熱量を、名目GDPと時価総額で比べることがある。時価総額が名目GDPを上回るような水準だと、株式市場の過熱感があるといえ、また時価総額が名目GDPを下回る状況では、株式市場が実体経済を過小評価していると判断する材料に使われる。
下のグラフを見てほしい。これは名目GDPと東京証券取引所の時価総額の推移を示したものである。株式市場の時価総額を見ると、アベノミクスがスタートした2012年10-12月期以降、大きく回復している。2011年末に約250兆円だった時価総額は、2015年11月末時点で600兆円を超えるまでになった。
名目GDPと東証時価総額の推移 出所:内閣府、日本取引所グループの資料をもとにGFリサーチ作成 |
この時価総額600兆円という水準は、1995年以降で最も高い水準にあり、リーマンショック前の水準をも上回っている。行き過ぎた円高を異次元の金融緩和で是正し、株式市場にインフレ期待を抱かせ、現在のような円安をもたらすことで輸出関連企業の収益改善に貢献した。こうしたことが株式市場の時価総額を押し上げる土台になっている。
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