テクノロジーが可能にした新世界、どう育成するか
カーシェアやホームシェアのサービスが、米国のベンチャーをはじめとして既にあることはご存知のとおり。配車サービスのUber(ウーバー)や空き部屋シェアサービスAirbnb(エアー・ビー・アンド・ビー)は、米国内だけではなく世界でサービスを展開している。
ただし、各国において、既存の輸送事業者や宿泊事業者と新しいサービスがどのようにすみ分けるかについて、規制を含めてあつれきを生んでいる。シェアリングエコノミーが普及するかどうかは、新しいサービスにおいて消費者をどう守るのかというルールづくりとともに規制緩和の問題といえる。
なぜシェアリングエコノミーのような新しいサービス産業が生まれたかといえば、一言でいえば「テクノロジーの進歩」による。通信インフラの進歩とともにスマートフォンをはじめとした携帯電話が普及し、使い勝手の良いユーザーインターフェースを通じて「個人間の需要と供給」をマッチングさせるためのプラットフォームが実現したからだ。
2016年以降から2020年にかけて、「テクノロジーでどのようなハードウェアを開発できるか」というテーマは引き続き重要であることに変わりはないが、「テクノロジーを活用して、どのようなサービスを展開できるか」の方がより注目されるようになると筆者は考えている。製造業がグローバルに展開するスピード以上に、サービスが普及するスピードの方が速いからである。
最近にわかに注目されるようになったフィンテック(FinTech)も、テクノロジーを使った新サービスの1つである。一言でいえば、テクノロジーによりこれまで金融機関や一部のクレジットカード会社が独占していた決済機能をオープン化することで、シームレスに決済できるようにするものである。私が見る限り、中国のアリペイ(Alipay)が最も進んだ決済プラットフォームに見えるが、アリペイより使いやすい決済プラットフォームが生まれれば、消費が活性化する可能性はある。外国人観光客により多く消費してもらうための便利な決済機能としても利用価値がある。
日本では今でも、製造業を中心とした輸出が経済成長をけん引すると考えられている。だが、GDPのフレームワークでみれば、現時点では輸出以上に輸入の方が大きい。純輸出はマイナスの状況だ。『円安でも喜べない、日本のモノづくりの実情』でも述べたが、東日本大震災以降、化石燃料の輸入が増え、またスマートフォンをはじめとして通信機器の輸入も増加している。原油・エネルギー価格の低下や輸出に該当する外国人観光客の消費が増えることで、足元の純輸出のマイナス幅は縮小傾向にあるものの、今後、製造業が再び輸出を増やすことで純輸出を大きくプラスに転換させるのは難しいのではないだろうか。
こう考えると、アベノミクスの第2ステージでも、現在の「円安」を輸出企業全般の振興のために利用するというよりは、外国人観光客が訪日しやすくなる条件として捉えているのではないかとすら思える。
このように日本も、内需を刺激するには世界のテクノロジー動向を無視していられない状況となっている。2016年は従来以上に、「テクノロジーをどのように使うか」に注目しなければならない。政府も、そうした新ビジネスを適切に育成するために、ルールづくりを急いでもらいたい。
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