家計や市場による将来の物価上昇率の見通しが2013年4月に日銀が始めた「異次元の金融緩和」導入以来の最低まで落ち込んでいる。原油など商品価格の下落が響いている。日銀は消費者物価指数(CPI)上昇率2%という目標を達成するために、物価上昇期待の醸成を重視している。予想が下がり続ければ市場で追加的な金融緩和への期待も膨らみそうだ。
日銀が8日発表した15年12月の生活意識アンケート調査では、1年後の物価が「上がる」と答えた割合が77.6%と、日銀が異次元緩和を始める1カ月前の13年3月以来の低さとなった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が日銀調査を基に試算したところ、家計の今後5年間の予想物価上昇率は0.78%と異次元緩和後で最低に落ち込んだ。宮崎浩シニアエコノミストは「日銀が追加金融緩和に踏み切った14年10月より低く、これまでの日銀の説明では追加緩和が必要な水準だ」と指摘する。
市場参加者の予想物価上昇率も鈍化が続いている。物価連動国債の利回りから導いた先行き10年間のCPI上昇率の見通しを示す「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は、8日時点で年0.63%。財務省が物価連動国債の発行を再開した13年10月より前のため単純比較はできないものの、12年9月18日以来の低水準となっている。