1970年代に建てられた集合住宅の窓や壁の断熱性や気密性を高い状態に改修すると、冬場の床の温度は3度程度高くなり、そこで過ごした高齢者の血圧が下がったとの実験結果を、東京都健康長寿医療センター研究所などのチームが1日までにまとめた。
断熱改修が省エネに役立つだけでなく、人の健康に好影響を及ぼすことを示す結果。国土交通省によると、断熱性能などを定めた99年の国の基準を満たすのは6%のみ。建物の断熱性能向上の促進策が求められそうだ。
実験は、79年に建てられた東京都内の集合住宅で実施。2014年12月から15年3月、60~70代の男女計30人が、断熱性能に差をつけた3種類の部屋に1泊し、室内の温度環境や、参加者の24時間血圧や脈拍の変化を調べた。平均年齢は68.8歳。
窓ガラスを複層ガラスに取り換えたり、壁に断熱材を入れたりするなど最も断熱性と気密性を高めた部屋は、断熱性を高めず、外に空気が逃げやすい状態だった部屋と比べ、居間の床表面温度が3度程度高かった。
日中を中心とした活動時間帯の最高血圧は、最も断熱性が高い部屋で過ごした場合、最も断熱性が低い部屋より平均3.1ミリHg低かった。
高齢者は寒さによる刺激に弱く、血管の収縮による血圧上昇を招きやすい。断熱で刺激が小さくなったことで、血圧が低くなったとみられる。
厚生労働省によると、70歳以上の男女の30%以上が高血圧で、同省は食塩摂取や飲酒を減らしたり、運動を取り入れたりすることで、最高血圧を平均約4ミリHg下げるのを目標にしている。
同研究所の高橋龍太郎前副所長は「厚労省の目標は、飲酒や食事などでの複合的な対策によるものだ。断熱改修でこれだけ血圧が下がるのなら、効果は大きい」と話す。〔共同〕