東日本大震災で東京都町田市のスーパー「コストコ多摩境店」の駐車場スロープが崩落し8人が死傷した事故で、業務上過失致死傷罪に問われた建築士、高木直喜被告(69)=石川県野々市市=に東京地裁立川支部は8日、禁錮8月、執行猶予2年(求刑禁錮1年6月)の判決を言い渡した。高木被告は控訴する方針。
地震による建築物の崩落をめぐり、建築士の刑事責任が問われるのは極めて異例。判決で阿部浩巳裁判長は「自分の設計を総括責任者に正確に伝える義務を怠った」と被告の過失を認めた。
高木被告は揺れ方が異なる建物とスロープを強度の強い床でつなげるよう設計していたが、実際は強度の弱い鋼板だけでつながれ、震度5弱~5強の揺れで崩落事故が発生した。
阿部裁判長は「総括責任者が構造設計の内容を把握できるよう配慮しなかった」と指摘。一方で、施工業者や、検察が不起訴とした総括責任者にも同等の責任があるとし、高木被告の前任者で同様に不起訴となった建築士にはより大きな責任があると指摘。「被告の過失は重大とは言えない」と述べた。
店舗の設計担当者は、経費削減を目的に着工1カ月前に、前任者の建築士から高木被告に変更されていた。
高木被告は判決後、記者会見し「自分の設計通りになっていなかったのは予見できなかった」と不満を述べた。
判決によると、高木被告は01年12月~02年1月の構造設計変更の際、地震が起きたら接合部が壊れる危険があったのに注意を怠り、11年3月11日の大震災によるスロープ崩落で2人を死亡させ、6人にけがを負わせた。〔共同〕