倒壊した民家に取り残された人を救助する消防と警察の救助隊=15日午前3時27分、熊本県益城町、上田幸一撮影
熊本で14日夜に起きた激しい揺れは人々の命も奪った。身内や近所の人たちは悲しみにくれた。
地震で亡くなった方々
熊本で震度7 これまでの経過を時系列で
特集:熊本地震
亡くなった荒牧不二人(ふじと)さん(84)=熊本県益城町惣領=は妻と息子の3人暮らし。住民らによると、地震で全壊した荒牧さんの自宅には近所の人が集まり、懐中電灯を手に、がれきの山に登って救助を試みた。荒牧さんの妻は、がれきの中にわずかに残った空間で、震えた状態で見つかった。ただ大声で「荒牧さん、いるか!」と呼びかけても、返事はなかったという。
近所の女性(55)によると、荒牧さんは精米業を経営。自動車を運転し、30キロの米袋を軽々とかついで配達に回っていたという。「足腰が丈夫で若々しかった。ジーパン姿がとてもダンディーだった」。カラオケが好きで、自宅で教室を開き、年に一度は町の文化会館で発表会も開いていた。「おだやかで思いやりのある人だった。本当に悲しいし、亡くなったという実感がまだない」
地震の犠牲になった松本由美子さん(68)=熊本市東区=の義姉(69)は、「まさか自分の身内を地震で亡くすなんて。信じられない」とうつむいた。地震後、心配した義弟が松本さんの携帯電話にかけると、搬送先の病院の医師が出て、亡くなったことを告げられたという。
松本さんは体の不自由な夫と2人で暮らしていた。自らも病気で足が悪かったが夫を献身的に支えていた。当時一緒に自宅にいた夫はやつれた様子で、話もできない状態だという。
亡くなった村上ハナエさん(94)と息子の正孝さん(61)=益城町木山=の近所の男性(55)は昨夜、揺れに驚いて外に出ると、村上さん宅がつぶれていた。「正孝ちゃーん、おばちゃーん」と声をかけたが、返事はなかった。すぐ119番したがなかなか消防が来ず、亡くなったことは近所の人から聞いた。正孝さんとは幼なじみ。「腰が低くて人当たりが良く、人の悪口は言わない人。驚きと悲しい気持ちでいっぱい」
坂本龍也さん(29)=熊本市東区=の親族らによると、坂本さんは3人兄弟の三男。中学時代から本格的に野球に打ち込み、高校でも野球部だった。亡くなった際に訪れていたのは、交際していた女性の自宅だったという。
おばの東田英子さん(65)は「親思いで、人が良すぎるくらい優しかった。間違いであることを願っていたんだけれど……」。兄の辰徳さん(34)は「兄弟の中で一番明るい性格。まだこれからというときに……。何とも言えない」と、言葉を詰まらせた。