体と心が一致しない「トランスジェンダー」の高校生が、学校でどのトイレを使えるかが争われた訴訟で、米バージニア州にある控訴裁判所は19日、地元の教育委員会の「体の性と同じトイレを使わなければならない」という規則が、教育での性差別を禁じた法律に反するという判決を言い渡した。
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米メディアによると、この法律によってトランスジェンダーの権利が保護されると控訴裁レベルで認められたのは初めて。米国では現在、トランスジェンダーの人たちのトイレ利用が注目されており、他の州にも影響がありそうだ。
今回の訴訟は、女性の体で生まれ、現在は男性として生きる生徒が起こしていた。生徒は学校側にトランスジェンダーであることを伝え、男子トイレを利用していた。地域の住民から「他の生徒のプライバシーが侵害される」「トイレ内の事件につながる可能性がある」などの意見が出たため、教育委員会は2014年末に、使うトイレは体の性で判断する規則を決めた。生徒が男子トイレの利用を求めて提訴し、一審では敗訴していた。
19日の判決は、教育における性差別の禁止を定めた法律をめぐり、連邦政府が15年に「トランスジェンダーの生徒については一般的に、心が一致する性で扱わなければならない」と発表していることを重視。教育委員会の決定はこれに反していると述べ、生徒の権利を認めなかった一審判決を破棄した。
米国ではこの1~2年でトランスジェンダーの権利が重視されるようになる一方、トイレの利用を体の性別に限定させる動きも出ている。ノースカロライナ州では3月、学校のトイレなどについてこうした利用を義務づける法律が成立したが、「差別につながる」として、複数の企業が同州への進出を断念したり、ミュージシャンのブルース・スプリングスティーンらが州内の公演を中止したりしている。ノースカロライナ州は19日に判決を出した控訴裁の管轄内にあり、判断は同州にも効力を及ぼす。(ニューヨーク=中井大助)