闘病生活から復帰して1年になる瀬戸内寂聴さん=1日午後、京都市右京区、伊藤菜々子撮影
骨折やがんを経験し、活動再開から1年を迎えた僧侶で作家の瀬戸内寂聴さん(93)。来月には94歳になるが、執筆意欲は衰えない。5月には闘病記や掌小説の新作を出版し、朝日新聞や文芸誌への連載も続く。平和への思いとともに今の心境を聞いた。
月刊誌「群像」(講談社)で、長編小説「いのち」の連載を始めました。最後になるかもしれないと思って書いています。病気をしたからというより、93歳なら、いつ死んでもおかしくない。先のことなんて考えられない。だから一瞬一瞬。
病気のことだけじゃなく、全部書こうと思っています。肉親も縁のあった男たちも、みんな死んだ。だから、誰のことを書いても「いのち」なの。人間が生きるってことは死ぬためでしょう。死ぬために生きている。会うってことは別れるためですよね。いつか別れなきゃならない。
生きてたら病気をするのは当たり前。ああ今は病気をするときだなと思って受け入れるしかない。それができたら楽だけど、さからって無理をするから悪くなる。人間は、なかなかすべてを受け入れられないから悩む。