■スコアの余白

野球は「確率のスポーツ」と言われる。その言葉を象徴するシーンが、４月２９日のソフトバンク戦であった。１―１の四回無死一、二塁、西武の坂田が一、二塁間を破る勝ち越し適時打を放った場面だ。打球がうまく野手の間を抜けた。

長打力が魅力の左打者。ただ、今季３併殺はチームワーストタイと、併殺に倒れて無得点に終わる危険性もある。次打者は、２７日までの最近５試合で打率５割３分３厘の渡辺直だ。田辺監督はバント指示が「頭をかすめた」という。

だが、１軍での坂田の犠打は、２７日までの全７２８打席中４打席だけだ（約５％）。最後に記録したのは２０１２年。指揮官は「思いきり打たせた方が悔いが残らない」と、「打て」のサインを出した。

そこに「確率」が絡んだ。２７日までの坂田の今季打率は２割５分。ただ、対右投手で三振を除いた５１回のアウトを見ると、飛球２２に対し内野ゴロは２９。凡退してもバットに当てれば、約５７％の確率でボールは転がっている。しかも内野ゴロを方向別で見ると、一、二塁間は６２％（１８個）だ。

配球も味方した。ソフトバンク・中田はスライダーを軸にしており、坂田も「まともに直球では攻めてこない」と変化球待ちだった。最低でも「（１死）二、三塁」と、右方向へ進塁打を打つ意識だった左打者にとって、向かって曲がってくるスライダーは引っ張りやすい球種だった。

この一打から５得点。「バントも練習しないといけないんですけどね」。苦笑いした坂田の特徴を生かした西武の勝利だった。（遠田寛生）