9日、大統領選挙の投票のため、マニラの投票所を訪れて名簿を確認する有権者=ロイター
フィリピン大統領選の投票が9日、始まった。午後5時に締め切られ、開票が始まる。大勢は翌10日にも判明する見通し。最大の懸案は南シナ海の領有権問題。中国とどう向き合う新大統領が選ばれるのか、国際社会も注目している。
事前の世論調査では、米不動産王トランプ氏のような過激発言で知られるダバオ市長ロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が33%の支持でリード。女性の上院議員グレース・ポー氏(47)が22%、アキノ大統領が後継指名した前内務自治相マヌエル・ロハス氏(58)が20%、ジェジョマル・ビナイ副大統領(73)が13%で追っている。
ドゥテルテ氏は南シナ海問題について、「私が水上バイクで中国の人工島に行って旗を立てる」「私が撃たれれば国民は涙を流す。私が英雄になるかどうかは中国次第だ」など過激な発言で中国を挑発。同時に「私が中国と話をつける。対話で解決する」とも述べている。
これに対し、大統領後継のロハス氏は政権の「親米反中路線」を継承する方針で、「中国に決して屈しない」と話す。常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)で優位な判決を勝ち取り、国際社会を味方に中国に圧力をかけるシナリオを描く。ポー氏も「南シナ海は中国の中庭ではない。沿岸警備隊を増強して漁師を守る」と主張。一方、ビナイ氏は中国との経済上の関係を重視する立場から、「対話をする」と穏当だ。
駐フィリピン中国大使の趙鑑華氏は「関係を改善できる大統領を望む」とフィリピン紙にコメント。AP通信は米ワシントン発の記事で、次期大統領が中国との緊張にどう取り組むかは「不確かだ」と悲観的に報じた。日本政府関係者は、ドゥテルテ氏の過激発言を「どこまで本気なのか」といぶかりつつ、「(どの候補が勝利しても)日本との友好関係は変わらない」とみている。(マニラ=佐々木学)