介護の必要な妻(当時69)を殺害したとして、殺人罪に問われた栃木県那須町高久甲の無職常松正根被告(71)の裁判員裁判が16日、宇都宮地裁で始まった。被告は起訴内容を認めた。
起訴状によると、被告は昨年12月17日午前0時ごろ、自宅で寝たきりだった妻葉子さんの首を布製ベルトで締めつけ、窒息死させたとされる。被告は約2時間後、「介護疲れで殺した」と栃木県警那須塩原署に自首した。検察側は冒頭陳述で「妻のおむつを替えている最中、暴言を吐かれて立腹し、殺害を決意した」と述べた。
弁護側の冒頭陳述によると、妻は2004年、脳出血で倒れ、寝たきりの状態になった。被告は11年間、食事や排泄(はいせつ)などの介護をしてきたが、妻は事件の5年ほど前に認知症の症状が出始め、被告に暴言を浴びせるようになったという。弁護側は「被告が精神的に追い詰められ、限界を超えて起こした事件だ」と述べた。(山下裕志、伊吹早織)