初公判に出廷した中尾知佐被告=福岡地裁、絵と構成・権田広美
福岡県筑後市のリサイクル店経営の夫婦が、従業員や親族ら3人を死なせたなどとして殺人や傷害致死などの罪に問われた事件で、妻の中尾知佐(ちさ)被告(47)に対する裁判員裁判の初公判が16日、福岡地裁(平塚浩司裁判長)であった。
知佐被告は起訴された事件のうち、殺人と傷害致死罪について「暴行は夫がしたことで、自分は指示していない。殺すつもりもなかった」などと起訴内容を否認し、無罪を主張した。
知佐被告と夫の伸也被告(49)が死亡に関与したとされるのは4人。このうち①2004年6月に衰弱死した従業員の日高崇さん(当時22)への殺人罪②06年10月ごろに死亡した義弟の冷水(ひやみず)一也さん(当時33~34)とその息子大斗ちゃん(当時4)への傷害致死罪で起訴された。
ほかに知人男性名義のキャッシングカードで現金を引き出したとされる窃盗罪でも起訴された。04年に暴行を受け死亡したとされる従業員の男性(当時19)については傷害致死罪の時効が成立しているとして不起訴となった。
知佐被告は罪状認否で、窃盗については起訴内容を認めた。日高さん殺害については「暴行は夫がしていた。事件について夫と話したことも指示したこともない」と共謀も殺意も否定して無罪を主張した。
冷水さんの死亡についても同様に無罪を主張し、大斗ちゃんの死亡については「夫が裏拳で殴り倒したからです。私は(暴行に)反対していた」と述べた。
検察側は事件全体の冒頭陳述で、「中尾夫妻が経営していたリサイクル店では従業員ら4人が亡くなり、その後も被害者が生きているように装い、遺体が発見されなければ完全犯罪にできると考えた」と主張。「4人の遺体は伸也被告の実家の庭に埋め、1~2年で掘り起こして白骨を粉砕機で砕き、川に流した」と指摘した。
また日高さん殺害の動機については、両被告が別の従業員の男性に日常的に暴力を加え、男性が死亡したため「口封じする必要があると考えた」と説明した。弁護側は「日高さんを殺してまで男性の死を隠す理由はない」と反論した。
裁判は6月9日に結審し、判決は6月24日に言い渡される予定。両被告の裁判は別々に開かれ、伸也被告の初公判は6月27日に予定されている。(張守男)