安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎財務相、谷垣禎一自民党幹事長と会談し、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する方針を伝えた。延期期間は2019年10月までの2年半とする考えも示した。だが、会談では反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになった。複数の政府関係者が明らかにした。
会談には菅義偉官房長官も同席した。首相は熊本地震の発生に加え、今後は世界経済の収縮も懸念されることから、来年4月に予定通り消費増税を実施すれば政権が掲げるデフレ脱却がさらに遠のきかねないと判断し、増税時期を先送りする考えだ。
首相は、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した27日の記者会見で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識を共有した」と強調。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率引き上げの是非も含めて検討する」と述べ、増税を延期する考えを示唆していた。
28日夜の会談で、首相は伊勢志摩サミットの議論などをもとに、予定通りの増税を求める麻生氏らに増税延期の方針を伝えた。ただ、麻生氏は延期に反対し、仮に延期する場合は「衆院を解散すべきだ」と主張したという。このため、29日以降も調整を続けることにした。
首相は今後、山口那津男公明党代表らとも会談し、増税延期に理解を求める。政府・与党内で合意が得られれば、参院選前に正式に表明する考えだ。首相は14年11月にも15年10月の消費増税を1年半延期しており、今回延期を正式に決めれば2回目となる。
一方、首相は公共事業など新たな経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成する方向で検討に入った。首相官邸の幹部は「消費増税を先送りし、大規模補正を打つという考え方もある」と主張。規模は与党内で5兆~10兆円との見方が出ており、参院選後の臨時国会に補正予算案を提出する方向だ。