退任のあいさつをするソフトバンクグループのニケシュ・アローラ副社長(株主総会の会場を映したモニター画面から)
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義社長(58)は22日の株主総会で「僕がもう少し社長を続けたくなった」と述べ、後継者候補のニケシュ・アローラ副社長(48)への禅譲を先送りにしたことが、アローラ氏の突然の退任理由と説明した。とはいえ、株主総会前日の後継者候補の退任発表は異例の事態で、それだけが理由ではなさそう。突然現れた外国人幹部に対する社内の困惑や、孫氏が主導権を取り戻そうとしたことも背景にありそうだ。
退任のアローラ氏「孫社長の決断を尊重」 株主総会で
孫氏と「相思相愛」が一転、確執表面化 アローラ氏退任
孫氏はこの日、「60歳の誕生日で潔く代わろうと思った」が、「あと1年となって欲が出てきた」と説明。「少なくとも5年、おそらくは10年近く社長でいたい」と続投宣言し、「ニケシュは今回の件で一番の被害者」とかばってみせた。当のアローラ氏は「投資先の若い創業者と会う中で孫社長も若返った」と皮肉っぽくあいさつした。
こんな説明を「とてもその通りには受け止められない」とSBG幹部の一人は言う。アローラ氏はSBGに単身乗り込んだわけではない。グーグルやモルガン・スタンレー出身の外国人数十人をスカウトし、この「ニケシュ・チーム」がシリコンバレーのオフィスを拠点に世界中の投資案件を物色している。彼らは、本社の海外移転検討やアリババグループなど投資物件の売却、社債発行による資金調達など経営中枢にも影響力を及ぼし始めた。
こうした外国人幹部の存在は、「譜代大名」のような幹部には煙たく映った。古参幹部ほど「孫さんの喜ぶ顔が見たい」という心理が働く。孫氏との個人的なつながりの深さが社内の地位を安定させ、仕事のモチベーションも高める。それだけに「私を飛び越えて、アローラ氏は私の部下から直接ヒアリングする」(子会社社長)とやりにくさをこぼす声があった。